原作寄り道編 07
三日目の昼過ぎ。仕事を終えた者がちらほらとでてくる。


「お先でーす」


机上に処理し終えた書類置いてはいい笑顔で挨拶した官吏を、まだ書類残る隣が小突いた。


「てめ、ずっりい」

「はは、俺お前より書類多かったからずるいとかねえし。まー、やりやすかったし久々に本気で仕事したもん。やれば終わるもんだなー」

「ちぇー」


隣の席の者は書類に向きなおった。







帰った者がでてきて焦ったのか、書類違いや墨零しなんかの小さなミスやトラブル起きはじめ、空気がピリピリしだした。


「ってことで休憩。俺が終わりって言うまで寛ぐこと。これは強制、中央机の甘味は食べてよし、手作りだから味は保障しないがな。茶は勝手に注げ!」


不平不満漏らすのも気にしない、筆を置かせて休ませる。一度落ち着くことも、仕事をやる上では大事だ。
休めと言われ戸惑う官吏の中で、いち早く休憩にはいり栗饅頭を口にした猛者は、ふわと表情和らがせた。


「うまっ…これ、先に帰ったやつ損だぞ」


その言葉に皆も中央机に集まり摘みだす。漏れるのは美味い美味しいのオンパレード。


ふっ、栗饅頭も芋羊羹もゴマ団子も三師爺集団が喜んで食べるから作って持っていくうち自然と得意料理になったんだよ。お茶も渋めでよく合うし。


いつもは書類が積まれる嫌われ者の中央机も、今は憩いの場と化した。菓子や茶器がからになり、皆が静かに息ついたところで休憩終わりを宣言する。


「んじゃ、残りの仕事さっさと終わらせようか」


そう言われ、皆が仕事に取り掛かりだす。


その後はミスなく順調に仕事処理し、定時を迎える頃には皆が仕事を終え、吏部内で打ち上げ状態だった。


帰るのは途中でもうよくなったらしく、終えた者が他の者手伝って思っていたより随分はやく、全ての仕事が終わった。


菓子はもう無いが茶だけで十分らしい。吏部はどんちゃん騒ぎの宴会状態である。
その騒がしさのせいか、尚書室の扉が内から開いた。誰もが一動きを止めた中、尚書室から出てきた尚書室の主――黎深は、そのままスタスタと迷わず真っ直ぐに櫂兎の席へとやってきた。


熱いお茶でホッと一息ついていた櫂兎へ黎深は言った。


「この騒ぎの原因はお前だな」


黎深はコクリと頷いた櫂兎を確認したのち、綺麗になった中央机上をみては眉間にしわ寄せた。しかし、それについては何も言及せず「尚書室へ来い」とだけ言って踵をかえした。


――遂に呼ばれた、か。


「今行きます」


櫂兎はすっと立ち上がった。

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空中三回転半宙返り土下座
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