「櫂兎様の言う通り、貴方は元州牧だというのにどうにも頭が弱いように思えて仕方なりませんわよ、そんな調子で明日からどうしますの!」
香鈴から強気な言葉が出だす。調子が戻ってきたようだとほっと櫂兎は息をついた。
「香鈴ちゃん、頑張るのはいいけど無理しすぎないようにな」
そうして耳元で小さく囁いた。
「茶州に向かう新州牧一行は、メンバー四人だと思われてる。イレギュラーな香鈴ちゃんだからこそ、できることもあるからな」
「め、めんま? い、れぎゅ?」
疑問符を頭に並べる香鈴に、櫂兎もしっくりくる言葉が出てこず説明できないで頬をかいていれば、燕青が櫂兎を突つく
「……何だ?」
「櫂兎、いくら見た目ずっと変わってないからって香鈴嬢ちゃんと歳の差考えてな……」
静かに鉄槌下して小声で「俺は少女趣味じゃない」と吐き捨てる。燕青は妙に納得した顔して「無自覚かつ守備範囲全般かー」と呟いた。意味は考えないことにした。
「そういや櫂兎、悠舜と同期だったんだな。茶州に一片戻ったときに色々悠舜に話しててさ、櫂兎の話題出た途端やけに食いつかれて挙句『間違いなく、その彼は私の友人である櫂兎ですね』とか言い出すからびっくりした」
「ははは、いやー、悠舜は俺のこと忘れてなくてよかった」
「櫂兎みてえな色濃いやつ忘れろってのが無理だっての。でさ、でさ!悠舜に櫂兎の国試結果きいたんだけど……」
「げ」
きいたのかよ、と片頬ピクピクさせる櫂兎をみて燕青はにやりと笑った。
「やっぱ良くなかったのかぁ〜! 悠舜、いくらきいても笑うだけで教えてくんなくてさ、『本人からききなさい』って言われたんだけど……もしかして、ケツから二番目とか??」
「なっ、櫂兎様がそんなわけないでしょう?! 上位及第に決まってますわ!」
そういいながら、二人の視線は櫂兎に集まる。長い沈黙、視線の痛さに苦笑いしながらぽつりと言った。
「…………うーんと、秘密で」
「えー、教えろよ櫂兎ー」
尚もしつこいくらいに教えろー教えろーという燕青に櫂兎はわざとらしく溜息つく。
「燕青お前準試で、受かったら順位何でも同じっつってたらしいじゃん?」
「ぬぁ、何故それを!?」
「自分が言ったんだ、俺が何位だろうと官吏になった、それでよし!」
ちぇ、といじける燕青をみて少し罪悪感湧く。今日はいじめ過ぎたかもしれない。……からかい甲斐がありすぎるのが悪いんだ、うん。
「明日流石に見送りはできそうにないから、今言っとくな。みんな無事で、やることやってこいよ。三匹の子豚もものぐさ三人息子も、全部末っ子が成功なんだぜ」
「最後のはよくわかんねぇけど分かった!」
「私、香鈴も秀麗様と供に成功おさめられるよう精一杯努めますわ!」
そんな二人にうんうんと櫂兎は大きく頷いた。
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