想いは遥かなる茶都へ 02
「おっ、香鈴ちゃん」


仕事も特になく定時であがり、往来ぷらぷら帰宅中、櫂兎は香鈴に遭遇した。


「櫂兎様! お久しぶりでございますわ!」


「あはは、様は付けなくていいって…」

「おーい、香鈴嬢ちゃ……わ、奇遇じゃねえかよ櫂兎。何、二人とも知り合いだったのか」


香鈴の後ろからみえた影は髭もじゃの燕青だった。


「ここで会えるんなら邵可に手紙受け渡し頼まなくてよかったかも……」

「はは、ばっちり受け取ってるぜ? ちゃんと届けるから安心しなってー。にしても香鈴嬢ちゃんとも既知の間柄だったとは、櫂兎の顔はどこまで広いんだか。知り合ったのはたのはやっぱ姫さん絡みでか?」

「いや、香鈴ちゃんはな――俺の友人の忘れ形見みたいなものなんだよ」


途端、香鈴が戸惑い、目を潤ませては必死に涙堪えているのが分かり、燕青はギョッとする。櫂兎は香鈴の様子に少したじろいだものの、そのあと香鈴の頭を優しくぽん、ぽんと撫でた。


「泣かないと決めたみたいだね。凛として、初めて会った時とは大違い。綺麗になった」


そうして「雨が降ってきたね」と晴天を見上げては香鈴の瞳からポロポロとこぼれだす雫をそっと拭ってやる。これは、全部雨。塩辛い雨。


ボソリと燕青が言葉漏らす。


「天然の藍将軍たらしみてぇ」

「何か言った?」

「いえ、ナンデモ」









香鈴が落ち着いたところで櫂兎はその笑みを燕青に向けた。


「出立っていつなんだ?」

「明日」

「へえ、明日。……って明日ぁ?!」

「おう」


あわあわとしだす櫂兎に燕青はニカッと笑った。


「うちの姫さん、やりくり上手の倹約家だから。小規模少数精鋭ってな」

「そんな倹約家だとか少数精鋭だとか難しい言葉使えるようになって…悠舜のやったことも無駄じゃなかったんだな」

「わ、ひでぇ。そんくらい元々知ってたっつーの」


眉下げて不服そうに口尖らせる燕青にくすりと櫂兎は笑った。

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空中三回転半宙返り土下座
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