そもそもの始まり 26
ぞくぞくと集まってきた"暗殺傀儡"をなんとか三人で切り抜け、手頃な木に二人は気配を消し飛び乗ってしまう。残念ながら俺にはそこまで忍者みたいな芸当ができず木にずるずると見苦しくのぼる

二人が声を出さず話しているのをみるが、全くなにを話しているのかわからない。


と、魁斗が動いた。


また寄り集まりかけた兇手を切り伏せ空間を一閃した。するとそこがまるで布を裂いたようにパックリと口を開け、その先に別の景色が広がった。


「なんだ!? なんだアレ!? すげー。手妻!?」


興奮気味の北斗に魁斗は暗殺傀儡への警戒を言う

しかし暗殺傀儡は打ち止めのようで、広がる景色は天に届きそうなほどに大きな黒い塔、だった。


それをみた魁斗が呟く。


「塔の中のお姫様か」


「ラプンツェルみたいに髪垂らしてってか。」


「お前の言葉は意味わからん」


まぁ彩雲国にはないよな、ラプンツェルの話。


「キャベツ食べたさにお姫さんを魔法使いに差し出したら、魔法使いはお姫さんを高い塔に幽閉しちまって、それを知った王子が姫さんの長い長い髪よじのぼって逢瀬して攫って魔法使いは塔から落ちて死ぬって話、だったっけなぁ」


妹からの伝聞だからキャベツ云々は違うかもしれないが


「俺も似たようなの読んだ読んだ! そんくらいなら読めるようになったんだぜ。助けにいくのってさ、強くてカッコイイ貴公子だろ!? で、綺麗なお姫様と結ばれるんだ。そうなったらドースル!?」


「北斗……現実を見ようよ。僕たち兇手によく分からない女装中の変態だよ? 殺しにきたんだよ。お姫様と兇手が結ばれるって、どんな裏お伽噺なの。っていうか女装男がついてきてる時点でもう旅芸人の一座のノリだよ? 悪党っぽく略奪しようとしたって笑い話になっちゃうよ」


今回俺が女装してついてきたことをかなり気にしている様子の魁斗に、ムキになって女性らしく振る舞う。


「変態変態言うなですわ、全くもって失礼な王子サマね。白馬に乗って出直すべきよ、この略奪間男」


ふんと鼻をならす魁斗だが、既視感あるのか少し考えた風な顔をする
そして妙な既視感の正体に気づいたのかハッとして北斗や俺に目を向けた


北斗とはいうと鼻歌交じりに「いーじゃん。お姫様と冷酷な殺し屋の禁断の愛! 監禁野郎から略奪愛だぜ!! 超かっこよくね!?」と浮かれ


俺はというと「この間男がッ」という気持ちをいっぱいいっぱい視線にこめ魁斗を見つめていた。


「気持ち悪い目で見るなよ」


「うふふ、被害妄想じゃなくって?」


おほほほほと笑う俺。と、そこに殺気が飛んでくる

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空中三回転半宙返り土下座
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