そもそもの始まり 20
剣道の技なんてそのまま使えば頭や手首や胴を斬りつけたり殴り潰すような危険なものなのだ。フェンシングも急所を突き刺す感じだし。使えない使えない



そんな大したものではなく。何がいいか、剣道やら武道やらの足運びで相手の重心を利用して……


うん。
今の隼凱なら油断してるっぽいし、何がくるか楽しみにしてるからきっと受けとめてくれる



駆けて、剣で剣を押す

ぶつかったときにキイィン、と今までより鋭い音がした

隼凱の体重のかかる剣に、俺の体重もかけ、受け流せないように剣同士の角度を調節する

今隼凱は自分の押す力と俺の体重の乗る剣を持っている。それだけでもきついはずだ、手首が震えている。俺は体重をかけやすい上から、隼凱は剣を持ちづらい下からの角度で力を均衡させているから尚更だ

それを、一気に、ずらす


スライドする剣に金属特有のこすれ合う嫌な音
しかしそれは気にならない、上手くいくことを確信して自然と笑みが零れる


二枚の押し合う板が片方抜かれれば崩れるように、隼凱のバランスが崩れる

そこに欠かさず剣の鞘で手首に一撃
痺れた手は剣を離す


カラン、と剣の落ちる軽い音


「いっっってえええ!! 馬鹿力あ!」





周りの武官たちからの歓声

宋将軍に力で勝つなんて、などと言葉がきこえる。万有引力とか慣性の法則とかてこの原理とかそういうの利用しただけで俺がムキムキなわけじゃないのに、すごく誤解されている。


「剣筋もなにも切りかかってきたの最初が最後だったしな。」


「剣はド素人だって考えて教えてもらえた方がいいんだけど」


「そうか。今のままでもいけそうだが」


んなわけあるか!

喉元までてかかった声を押しとどめる


「武術的なのはやってたんだ。剣持つのとじゃ全然違ったけど…」

「なるほどなー」


なにがなる程なのか分からないが俺の剣下手を一応認め指導してくれるらしい。武官の暇な人が。

そう、武官の暇な人が。


俺が隼凱に教えを乞おうとしたら心優しい武官の方が止めて下さったのだ。隼凱は指導に向いてない、実践派だから、と。


そういえばそうだった気がするなんて今更ながら思い出して優しい優しい武官、太白さんの分かりやすい指導の元今に至る。

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空中三回転半宙返り土下座
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