「なんだこの屋敷」
探検を一通り終えた櫂兎は呟いた。
茶本家も真っ青であろう隠し扉の多さに、何故か階段は側面に隠された出っ張りを押せば滑り台状になるし、天井裏の隠し部屋はいかにも表の世界をに出歩けない人間匿えるような設備付き。
おまけに……
「地下室……広っ!」
横に伸びる地下室、地下通路は確実に屋敷の敷地以外のところへ広がっていた。
というか広すぎて地下は探索し切れなかった。
屋敷の見取り図はないのかと殲華にきいてみれば見取り図を描かず作るタイプの頭領だったらしく、屋敷を建てた人員すら把握できておらず、分かっているのは指示を最後まで出した頭領のみ、ということだった
地下は下手すると遭難しかねないのでまた食糧をきちんと持って進むことにした。というか自宅遭難だなんて絳攸じゃあるまいし、遠慮したい。
何はともあれ1人で過ごすには広すぎる屋敷だった
「よし、ここ日当たりいいしほのぼのしてるから佳那の部屋と名付けよう」
ついでに食器や家具、衣服まで佳那の分まで用意しかけて押しとどまる
ホームシックもここまでくれば立派にして変態的らしい。こわいこわい。
しかし何にせよ殲華がくれたお小遣いという名の先行投資が尽きる前に就職なり新興商業なりしないと大変だ
殲華に「お小遣いもっとください」なんて……言うの嫌すぎる……
しかし素性謎の男がうろついてても誰も雇ってくれる筈なく。
そのままフラフラ歩いていると何時の間にか日が暮れ、何時の間にか周りの景色も艶やかで華々しい明るいような…夜の街、に、
「…何故俺は華街にたどり着いたよ」
肩を落とすしかなかった
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bkm