そもそもの始まり 10
「……それが理由ならば私は帰ります」


邵可ーー今は魁斗というべきか?ーーが、そういって背を向ける


「あ、待って待って、自己紹介させて! ほら、あれだよ、なんて言ったっけ?
『友達の友達は友達』!」


「私はこのクソ王と友などというものになった覚えはありません、吐き気がします。失礼します」


「うああああ失言! ですよねー!待って、まって! 俺はーー」


「噂の『王の客人』でしょう? 急に誰にも気づかれず王を訪ねてきたという。長居なんてせずそのままお土産に首持って帰ってくださればよかったのに」


ひどい言われようだな殲華!
言われた本人はというと、後ろでくつくつ笑っている。



「そんなに噂なんだ? 俺あんまりこの部屋から遠くまでいかないし、あんまり人に出会わないから知られてなかったと思ってたんだけど……」



「ああ、だが朝議で『夜半、部屋に前触れなく客がきた』と言ったからな」


それはつまり王の警備丸々すり抜け寝首をかけるだけのことはしたということで。


「〜っ、殲華ぁ!」



「友人が遊びにきたようだったから問題ないとは言っておいたぞ?」


いやいや、警備関係者は真っ青だろう。厳重な警備を易々すり抜けてきた『客』、噂にもなるはずだ。
ていうか俺暗殺者と間違えられても仕方ないんじゃね?



つまり目の前の魁斗に王の安全のためぬっ殺されても仕方ないであろうという。なさげだけど


「あんなのが友達だとかいうからマトモには見えないかもしれないけど、俺何も持ってないし友達くらい増えてほしいんだわ。」


「俺1人では満足できないと言うのかこの贅沢もの」


「口挟むな! 今殲華とは話してないっつの!! 俺友達はいくらでもほしいタイプだっての!」


心の友はなかなか作れないけど、って、話が逸れた



「俺は棚夏 櫂兎、よろしく」


右手を差し出せば、フンと鼻で嗤って払われた


「魁斗、だ。会って直ぐに知り合い以上になろうなんて馴れ馴れしい真似は御免だよ」



……俺ってば振られた?!

でも、そういって背を向けた魁斗の姿は尻尾垂れ下げて帰るワンコに似ていた。

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空中三回転半宙返り土下座
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