まあ癪だが霄太師ーー今はまだ宰相らしいーーのお陰で部屋まで戻ってこられたわけだ
しかし
「帰ってきてすぐ何故俺が縛られなきゃならない!? 何この束縛プレイ!」
部屋に戻るなり腹部に打撃お見舞いされ呻くうちに手足は固定され、そのまま縛られてしまった。
まぁ、相手が殲華と気づいたから反撃しなかったのではあるが
「はは、帰ってくるのが遅すぎる。うろつかれると困るんだ、このまま今はじっとしてろ」
「だからって何故縛る!? 幽閉よりよっぽどたち悪いぞ殲華!やっと本性だしやがったなああああ!」
「なんだ? 薬物の方が好みだったか? しかしそれではしばらく起きないどころか下手すれば永遠の眠りだしな」
なんとも物騒な話だ。
「で、何が目的?」
手足が縛られ自然と見上げるかたちになる。にやにやとこちらを見る目が苛立たしい。
「紹介したい奴がいたんだ。会わせれば何となく面白そうだったしな」
「何となくで縛られる道理があるかよ! くっ、誰に会わせるってんだ、嫌な予感しかしないぞ」
この展開で出てくるであろう人物に予想がつかない筈がない。むしろ心なしかやっぱりなと思い始める。ああ、可哀想な俺。
「よし、入れ『黒狼』」
「理由もなしに呼び出したかと思えばコレが理由ですか、殲華王」
非常に冷ややかな声。うん、間違いなく男性ボイス。
ふと、鬼姫の縹家行きが決まる前に俺がきていたらなんて思った後で、きていても俺は役に立てないし彼女は行ってしまうだろうと言い訳じみた発想に至り自嘲する
「理由ならあるぞ。重要な理由だ。ほら、これは櫂兎だ。どうやら余の友人らしい」
「本人が『〜らしい』とか言うかよ、まるで俺が友人自称してるみたいだろが。可愛くないんだから照れるなよー」
軽口をたたいたら横腹を蹴られた。鈍い痛みに顔を顰める
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bkm