夏が過ぎ、秋が来て、貴陽の街は死んだまま。俺が何もできないことに絶望を覚え始めた冬のはじめごろ
王位争いはあっさり終焉を迎えた。
三男派に寝返ったと思われた四男派が、五男派に内通していて三男派は内部自滅。あっさり五男が王位争いに勝利のち―――自殺
どうして自殺したのかも、本当に自殺だったのかどうかも分からない。ただ、ほんとうにあっさりと内乱は終わったのだ
それをきっかけに瑤旋たちが、街の復旧に乗り出す。俺のお米はすっかり消えたし、まだまだ内乱の傷跡は大きく残るが、それでも、少しずつ、少しずつ、貴陽が息を吹き返すのがわかった
「瑤旋、鴛洵、隼凱、ありがと」
「ふん…儂は何もしてないがな」
照れたようにそっぽを向いた瑤旋の言葉に、鴛洵は苦笑いした
「霄が何もしていないというなら、儂は遊んでいたことになってしまう。ほとんど茶州にかかりっきりじゃったから…」
「なら俺はいつも通り剣振り回してただけーってか?」
へらりと隼凱は笑った
「要するに、手さえ貸せば、勝手に立ち上がる生き物なのだよ。立ち上がればまたいつか倒れることも、倒れっぱなしでいればそれ以上倒れることはないことも知っておきながら立ち上がる」
そういって瑤旋は顎鬚を撫でる。それをみて俺は言った
「……なーんか、みんな老けたのか達観してるっていうか、流石俺より歳上組っていうか」
「ふん、櫂兎が子供のままなのじゃろ」
一応社会人20代のときにだいたい40歳な彼らと出会ったはずなのだが…
いつまでたっても友でありながら子供扱いされる。まあ親子ほど歳はなれれば仕方ないのか
「でも瑤旋たちと初めて会ったときと同じくらいな年の訳でしょ、俺。なんか…瑤旋たちと比べれば成長してないなって思うわけで」
「見えないだけで、櫂兎は成長しとるよ」
ふわりと鴛洵が微笑む。それに続き隼凱も言った。
「剣の腕なんかはじめとは比べ物にならないくらいに上がったしな」
「まぁそれはひとえに太白さんのおかげだな、うん」
まるで自分の手柄みたく話そうとするので抑止すれば隼凱が拗ねる。それをみて笑った
「……傷が消えるわけじゃないけど、きっと時が癒してくれる、か」
そうあることを祈って。
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bkm