待ち望まない争いと 幕間・髪結い紐

黎深様の役に立ちたくて、官吏になり、吏部に入った。
心機一転、だらしなくてはいけないと思い髪を結ってみる


自分の髪は、少し癖があると思う。纏めにくいというか、括りづらいというか。


普通の髪紐を使って結うと、上手く結べず、紐の長さが微妙に足りない。力をいれてひいて結べば足りるので、頭が引っ張られる感じを我慢して結ぶが。


「……あ」


毎日きつく結び続け過ぎていたのか、髪紐が切れてしまったらしい。


今は勤務中、髪など気にして紐を買いに行く余裕もない。


どうしようかとオロオロしているところで、声がきこえる


「お、絳攸髪結ばないとまた雰囲気違ってかっこいー」


「棚夏殿に楊修殿…」


棚夏殿は、あの楊修殿が珍しく殿を付け呼ぶ人物。どうやら棚夏殿は吏部の古株らしく、楊修殿の元指導係だったとか


「んー、ちょっと待っててな」


棚夏殿がそう言ってゴソゴソ懐を弄り出てきた髪紐。


「これやるよ、俺のお古だけど」


「棚夏殿の?」


「え、髪括ってらしたんですか?」


楊修殿も知らなかったらしく、2人して驚く


「んー、国試終わったあとばっさり切って以来のばしてないんだけどな。ここまであったんだぜ」



そうして腰の少し上あたりを指す棚夏殿。なんというか、意外だ



「もう使わないだろうし、やるよ。結ばなきゃ気になるもんな」


「有難うございます」



棚夏殿に頂いた髪紐は長めで、自分には丁度良かった






「おい絳攸」


「……なんでしょう、黎深様」


廊下ですれ違ったとき、不意に引きとめられる


「その髪紐はどうした、朝と違うが」


「使っていた髪紐がきれてしまって…これは棚夏殿に頂きました」


「…………」


何故か悩み始めた黎深様


「あの、どうかされましたか?」


「いや、どこかで見たことがあった気がしてな……まあいい」



そうして黎深様は去って行った。
そこでハッとする


「………あっ、あの人また仕事放って府庫行った…ッ」


気づいてももう遅い。黎深様はもう見えないところまで離れてしまっている

俺は深い深いため息をついた。

45 / 45
空中三回転半宙返り土下座
Prev | Next
△Menu ▼bkm
[ 戻る ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -