そもそもの始まり 06
「くっ、何故お前みたいなやつが琴上手いんだ!!?」


「佳那の兄として楽の一通りくらいできなきゃだからな!」


実は日本舞踊やらオケ楽器できなくもなかったりする。
兄として妹に誇られる存在でありたいがためにしていたのだが、まさか清苑に褒められるとは。周りにプロになれだの海外留学しろだの言われるだけはあったらしい



「そのくせ舞もできるし学もあるなんてお前は完璧人間か?!」


「お前じゃなくって名前でよんでくれって何回言えばいいんだよーったく!
あと俺は完璧人間じゃない、可愛い妹に胸張りたいがために生きてる兄だよ」


途端、目を伏せる清苑


「……うちの兄に、見習わせてやりたい。
大した努力もしてないのに嫉妬し人を貶めたがる」


さみしげで悲しげな顔
見ていられなくてつい頬を引っ張った。


「いっ、いひゃい、何をする!」


「だってまたむっすりしてたんだもんなー
ほら、ここもしわよってる。眉ひそめすぎなんだよ、そのうち型つくぞー」


「…余計なお世話だ」


「余計でも何でもいいからお世話させろー」


逃げようとした背中をぎゅ、と包むように抱きしめる


「子供のくせに大人ぶらなくたっていいっての。甘え方を覚えようぜ」


「……」


清苑はうつむいたままだったが、ほんの少し、体重を預けてくれた気がした







「さて、と! そろそろ部屋に戻るかな」


そういって清苑とわかれたのが小一時間ほど前


俺は、未だに部屋にたどり着けずにいた。


ちょっと探検してみようと思ったのが運の尽き、見事に自分がどの辺りにいるのか見当つかなくなった。
絳攸、俺いつもお前のこと笑ってたけど今はすっげえ反省してる。これは迷うの仕方ないな


胃が空腹を訴える

もう夕にさしかかっているのか
これでは部屋に戻る前に空腹で倒れるかも
こうして歩いていても一向に人と遭遇しないのだから、倒れたのを発見すらしてもらえないかもしれない。となると、そのまま餓死……?

それだけは何としても遠慮したい。



と、今まで無人を貫いてきた廊下に人が現れた

道に迷ったら近くの人にきくこと、とても大事!


「すみません、道をお尋ねしてもいいでしょうか」


「おや、恋路とは自分で拓くものだよ」


何故そうなる


「いや、その道じゃなくて、えーと」

ていうか俺、自分の泊まってる場所の名前とかしらない!
どうやって尋けってんだ!?


「きた道からして、君が噂の客人かな」


「え、あ、そうです!
実は部屋に戻りたいのに道に迷ってしまって。」


「ならば送りましょう」


「うわぁ!ありがとうございます!」


どうやら廷内迷い餓死はまぬがれそうだった。

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空中三回転半宙返り土下座
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