「ここまで来たら分かります。ご丁寧にありがとうございました!」
やっと、やっと部屋の前まで戻ってきたのだ
目の前の人物に感謝である。
トリップ、空腹、迷子。
そんなことばかりが頭を占めていたため、相手の顔をあまりちゃんとみていなかったが、ここまで丁寧にしてもらった相手だ。顔を覚えておいてまたの機会にでも…
そう思いその人物をよくみたのが悪かった
知らなかったほうが精神衛生上よろしかったでたろう。一見年寄り、しかし瞳の光は未だ衰えておらず
そう、この人もしかしなくとも霄太師……
知ってる顔よりかはかなり若く30代後半、40代前半といったところか……?
口調が爺くさくなかったから全く予想してなかった…
「どうした、そんな惚けた顔をして。」
「いや……なんか、びっくりしただけです。」
「そうか。」
そういうと俺の顔をジロジロとみだす霄太師
「な、何でしょう?」
「……噂の客人、名を聞いてもよいかな?」
「…棚夏 櫂兎です、けど……」
「ふむ」
そういって黙りこむ霄太師
お、俺何かしたかな?
「まぁいいか。私は霄 瑤旋という。瑤旋でいい」
「はぁ……」
「あの王に友人ができたと言われ気になってはいたが…確かに面白いやつだな。
庭に雑草が何時の間にか生えるように、室に櫂兎がいたときいたから」
「俺は雑草扱いか…俺からすれば愛しの妹じゃなくて悲しみの極みだったんだけどな」
本当に。それどころか佳那と顔を合わせられない日が続いているなんて…地獄だ。
とびっきりの生き地獄、か。
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