「白ちゃん、黒ちゃーん」
羽林軍の様子を見にきてみれば、二人をみつけ声をかける
「誰が白ちゃんだっ!」
「……」
相変わらずの二人にあははと笑い、そして見えぬ影に疑問を抱く
「太白さんは?」
「実家に帰られた。まあ、このご時世だしな」
それは、武官を辞めたということだろう。なんていうか、誰にせよ最近それが多過ぎて寂しい
まぁ、太白さんの場合、剣を振り回しているところも格好いいけれど、生まれ故郷紅州の話をしてくれているときの方が表情穏やかに幸せそうだったので、今こんな貴陽にいるよかいいかもしれない
「あー、今日はこれ、1人じゃ食べきれないから配ってるさつまいも。羽林軍の皆にもどーぞと思って」
はい、とそうして今まで持っていた籠を渡せば燿世がよろめいた
それをみて雷炎がによによと笑う
「……」
燿世は抗議の目で雷炎をみて籠をぐいとおしつけた
それを持った雷炎が「げ」と声を漏らす
「お、も……っ」
「文官が軽々持ってた芋籠を武官さんが重いだなんて…っ」
ぷふーっと笑ってやればこの馬鹿力と罵られた。これも、彼らの尊敬する、何より俺の心の師匠、太白さんからの基礎指導で剣より重いもの振り回すようにした結果である。
え?何かって?………鉛玉括り付けた鉄の棒です……振り回すとき下手すると自分に鉛玉当たって怪我をするというスリリングな基礎訓練。太白さん、基礎に関して鬼畜なんだよな……
「まー、一番大変なのは冬だろうから今のうちにたくさん食べて太ればいいかも。…って芋だけ食べても太れないか」
あははと笑うが二人は『冬』という単語に体を止めたままだった
「……北二州への通路が雪で閉ざされる前に、国から物資団が行くって瑤旋が言ってた」
大丈夫だなんて言葉、今の俺には吐けないけれど。希望くらい持たせてほしい
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bkm