5月、サツマイモを今年も植えてみた。どうやらそれは大正解だったらしい
「見事に日照り続き……」
梅雨も短く小さな池や川は干からび田は枯れた。
井戸等地下水をひいているところだけが被害少なく済んだようだが、貴陽の街は全体的に水不足だった。
この様子じゃ、米の収穫はのぞめない。黄家もそれに気づき、流石にこれでは民の命を脅かすとパタリと米の買占めをやめる。しかし、これから食糧が足りなくなることは誰にも明白であり、生きたいのが人間だれしもで。
売り渋る店主に客が暴動に出たり、穀物庫が誰かに荒らされるなど、貴陽の治安も日に日に悪くなっていった
苛々して外朝を歩いていれば霄太師を見かけ、迷わず櫂兎は殴りこむことにした
「こんの狸爺ぃ!」
右ストレートを打ち込もうとすればよけられ櫂兎の腕は空を切る。近くにいた侍童が驚き引いているのも気にせず櫂兎は霄太師の胸倉を掴んだ
「ああ、年寄りは労わらんか」
「友人との喧嘩も青春のうち、瑤旋まだまだ若いだろ!問題ない問題ない」
生憎だがお互い三十路を越えていた。まぁそんなのお構いなしだ
「国庫の、穀物庫の開放はいつだよ」
「当分は無理だな」
いつの間にか櫂兎の手をすり抜け背後に霄太師は回る。確実に仙術の類だ
「何でだよ……はやければはやいほどいいだろ……」
心なしか涙声になる。だが、霄太師は辛辣に言った
「民全てを救って、国を復旧させるにはとてもじゃないが足りんのだよ」
「見殺しにしろってのかよ!?」
「ならば、国を死なせろと?」
ぐっ、と息が詰まる
「………仙洞宮の方の蓄えは」
「掛け合ったが大巫女に断られたよ」
ぎり…と、歯軋りする。
「国で貯蔵してる穀物類に、俺の米も追加してくれ。たいした量じゃないが、それでも、救える人数は増えるだろう。一刻も早く、頼む、頼むよ………」
「………儂はもう宰相の地位におらんというのにの」
はぁ、と溜息をつきつつも、霄太師は穏やかに笑った
「善処する」
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