「お次は牛乳茶。温まりますわよ」
牛乳は茶に入れるものじゃないだろうと、また酷い顔をするので笑ってしまう
「…どうして笑うんです」
「昔同じ反応をした人がいたから可笑しくって…ふふっ」
楊修もこんな顔だった。ゲテモノ類みる目でたゆたうミルクティーをみつめていた。
「……他の方とも、お茶したんですか」
「ええ、初めて口にするものばかりだったみたいで彼の反応が一々可笑しくて」
彼、という単語にピクリと反応したのにも気づかず俺が楊修とのお茶会を語る。春色四男は静かにそれをきいていた
「もう、夕方ですわね。そろそろ帰る気も湧いてきませんか?」
「…まだ、きいてないです。あのときのあの悔しがりようの理由」
くっ、抜かりない坊ちゃんだ。嘘をつくのも得策じゃないだろう
「内乱が治まらないのですわ。中央の政治も止まりましたし私はただ中立であり続けることでしか、女官らを守ることができない。それに、それ以外、民の手助けすらできない」
「……」
「大官人事刷新で、就いた尚書らもいい風に動いてくださっているみたいですが…殲華王が政に関わらず、宰相もおらずの今では、その動きも抑えられてますわ」
そこまでいってふふっと笑う
「官吏でもない女が偉そうに思案し悩んでるんです。馬鹿みたいだと思いますか?」
「別に、そんなことは……」
オロオロする春色四男の頭を撫でた。髪は綺麗にきっちり纏められていて触り心地はあまりよくない。
「私は、今の彩雲国は嫌です。こんなこと考えずに済んで、誰が王になるかで内乱を起こすよりも、どうやって国をよくするかを考える官吏が、多くいて欲しい」
しばらくの沈黙。
春色四男が口を開く気配はない
「言いましたわ。では、帰ってください。私も後宮へ戻らねばなりません」
茶会一式を仕舞い、手に持ち立つ
「僕が」
「…はい?」
「僕が、
その官吏になります」
俺は、その言葉が聞こえなかったふりをして、何か焦る顔の春色四男を背に室をでた
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