「…………馬鹿と言われたことはありませんか? 私なんかのためにこんなに手を冷やして」
ずっと力をいれて握ってくる手を当て付けのように握りかえしてやる。悔しいことに冷たくて感覚ないのか春色四男の顔は平気そうだった
「あいにく優秀さを褒められたことしかありませんね」
「では私から言わせていただきますわ。貴方は世界で多分5番目くらいに馬鹿です」
1番はご察し、この間水羊羹うまいとかいって倒れた彼である
「5番、ですか」
「ええ」
将来珠翠への行いをプラスマイナスすればこんなものだろう
いつまでたっても手を離す様子のない彼に、仕方なく譲歩する
「ここでは冷えますから私の室においでなさい。お茶を淹れますわ」
瞬間彼は手を離し、もう片方の手で俺の手を掴んだ
「こっちの方が手、あたたかいでしょう?」
………両手冷やしてこいつは何がしたいんだ。
取り敢えずそのまま、俺はその場に近かった、王宮寄りの方の室に入った
「え、後宮に室があるんではないのですか?っていうかここ…」
「後宮の方は遠いでしょう。こちらは王から預かっている室です」
この世界へきて殲華がくれた部屋。邸を用意してもらった後も好きに使っていいと言われている場所だ
後宮にも筆頭女官としての大きく煌びやかな室があるが……俺はそっちよりこっちの方が気に入っている
「はい、春色の貴方にピーチティーですの」
「……ぴ……な、何です?」
「要するに桃茶ですわ。桃の香りをつけた甘いお茶ですの」
「茶なのに甘いんですか!?」
「お砂糖いれましたから、甘いでしょうね」
まずそうなものを見る目でピーチティーを睨まれた。失礼な奴だ
しかし断るのは男が廃ると考えたらしく、一気に飲み干す春色四男
そして意外そうな顔をする
「おいしい………」
「ふふ、こういうお茶もまたよろしいでしょう?」
何せこの世界では紅茶から用意しなければならず、その過程で遊びに作り出したフレーバーティーだが、意外とこれが美味しい。ものによっては皮まで使うのがポイントだ
に、しても藍家のぼっちゃんが『紅』茶飲むのも不思議な感じだ
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bkm