春だ。待ちに待った春だ。四男じゃない方の春だ
雪解けをはじめた北の通行路では、今か今かと待っていた北への物資団が先日発ったらしい。瑤旋が色々やってくれていたようだ。鴛洵は茶州でごたごたあったらしく、一時的に貴陽を離れることになった
俺はというと、流石に何ヶ月越しにも仕事しないのは悪いと思って午前吏部、午後後宮の毎日。獏馬木殿が辞めたことで、何故か俺の位が繰り上がっていた。なんだそれきいてないぞ
かといって獏馬木殿の部下もそのまま部下というわけではなく、各方面や、吏部部位に散らしてあった。その位置がまた絶妙かつ吏部効率化につながるもので、俺は舌を巻く。俺ではこう思いつかないだろう、よく回る頭である
そんなわけで中途半端に高い位に一人、仕事量もそんなになく時間を持て余す。
内乱が少し息を潜めている、休戦中のようなピリピリした現在。静かすぎて怖かった
そして
「……孫陵王様が藍州州牧任命、されたそうですわね。ああ、御史太夫として共に旺季様も行かれるのでしたね。おめでとうございます」
「………………本当にそう思っていらっしゃるのですか、華蓮殿」
「陵王様が州牧になることは大賛成ですわ」
まあ、このタイミングでこれだ。中央から後継者争いに中立穏健派かつ重鎮的な一人の彼が地方へとぶのだから、反対といえば反対だが
「陵王様や旺季様が行けば、藍州も何かが変わるでしょうし」
たとえば司馬家の彼のことだとか
たとえば荒波へ投げ込まれる饅頭だとか
「でもそうしたら、暫くはお茶会、出来ませんのね」
「そのことではなく、その……」
「分かっております」
わかってる。彼が中央の現状をみて離れ難いことも
藍家と王家の関係上、今藍州州牧として就くのが重要なことも
「……貴女なら、別の答えを出したのではないですか?」
「州牧任命にですか? ……ふふっ
紅尚書、との返事をご希望なさりますの?」
彼は、任命されたとて絶対に首を縦に振らないだろう。仕事はしないくせに中央にいたがるはずだ
他ならない悠舜を待つために。
「確かにある意味藍家との繋がりはきれない、むしろ色濃くなりそうですし、国庫も潤いますわね」
その関係は決して友好的じゃ無さげだが
「でも私は、今陵王様が州牧になればいいと思って居ますから。もちろん、御史太夫で藍州に向かわれる旺季様も」
二人には、やってもらいたいことがあるし
友人がしたいことは応援したい
「おつとめ、頑張ってくださいね。時間が作れればそちらに一度、いってみるのもわるくなさそうですし」
トロッコ藍州行も、試しに使ってみようじゃないか
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