後宮をこっそり抜け出し久々に田園に顔を出せば、皆から農主様と声をかけられる。どうやらここ一帯で俺は大規模農地の主として有名らしい
「んでも農主様、急に田を畑にかえるなんてどういう風の吹きまわしですかい?」
汗を拭いながら中年の男性がいう
………これから飢饉だとか天災おこるから土地痩せてても栄養価高いサツマイモ植えようと思った、なんて言えないし
「芋がむしょーに食べたくなってなー」
サツマイモ植える時期は7月じゃ遅いから、収穫は遅れるだろうが
「土地も休ませてやらなきゃ美味しい米できないし、その間に芋作るのもいいかなーって」
「ははっ、違いねぇ。秋には焼き芋しましょうぜ」
「…いっぱいあればスイートポテト作れるかもな」
そんな余裕があればいいけれど
「すい?」
「や、何でもない」
そうして俺は鍬を引く牛の背を撫でた。
激化するだろうのは、この夏、秋あたりか
サツマイモはそのままだと保存には向かないので、その場で消費してしまうのがいい、か。しかし、端から配って足りるはずもないしな
全員救うなんて、おこがましいことを考えているせい?
できることをしているはずなのに、俺個人の力のなさが悲しかった。
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bkm