待ち望まない争いと 08
「王位争いも、内乱と化してきました、こちらにいらしては危険です」


「どこにいても危険なのは同じでしょう。ならば私はここを守るべきですわ、退がりなさい」


「……また、気が変わったらいつでも逃げてくださいまし」


似たようなやり取りを何度もしたというのに、飽きないものである。

だいたい女官達全員後宮に残っているのにどうして俺にだけ出ていけなんていうかな…



最近では朝廷でもちょっとしたいざこざから、剣の斬り合いになり血が流れた。信じられないことだったが、殲華が病気で寝込んでるとかなんとかだから、もうそろそろ王も終わりなんじゃないかと噂されて政もマトモに機能しない


瑤旋や鴛洵は、殲華が表舞台を降りたとき、共に官位おりて名誉職についてしまった。
隼凱も同様、将軍職を降り太傳位置になったようで
実質的な権力が殲華の花を受け取った者達になくなる。


そのことで、自分の目星をつけた公子に次の王になって欲しい官吏貴族達が奮いたつ
流石に政に剣が出てきた先日の出来事から、しばらく中央の政治が止まることになり、火種が今弾けることは免れた。しかしそれでも、火種は消えたわけではなく、むしろタチの悪いものになっていく。



「……んー」


しかし何故物価が上がるんだ
俺は不作や飢饉のせいだと考えていたのだが、今年は別にひどい台風も日照りもなく、他の農家に聞けば米の収穫量、例年とあまり変わらないらしい。見事に見誤って芋畑にしたものだ。まあ、さつまいも美味しいしいっか



「物資を蓄えているやつがいる?…何のために……」


とくにひどいのが米の値段の上昇
大口で買い占める者がいたようで、市場に出回る米は不作でもないのに少ない
むしろ、米の値上がりで他の物品も売り渋り、値上がりしているようだ



米など物資を買い占めているのは、これから値上ったり出回ることが少なくなるのを見越したお金ある貴族達。それらに共通点は………お金持ち、ってとこだけだな。


しかし、その『今買い占めておかないと危ない』という風潮の元は………


ああ、お金に煩そうな黄色い家がちらほらみえる


「……まさか、値上がりを目論んで自ら買い込み始めた………?」



米が値上っても得するのか?
いや、狙いはきっとそれじゃないんだろう。米の値上がりに伴う物価の上昇、市場自体が物資不足で回らなくなる、経営できるのは大手くらい。それで売り込み競争率でも下げるのか?
米を売り込んでも……なぁ……

元が米、利益はそんなにでないしお金持ちしか買ってくれないのに…


いや、お金持ち達に本当に売り込みたいのは………


「武器………か」


少し前の記録で鉄が黄州に大量になだれ込んでいる。それらは今頃武器に変わり血に濡れる日を待っているんだろうか


買う奴らも奴ら。貴陽を自分たちの手で戦火に晒そうとしているのか、あやつらは


どうやら俺の想像していた毒やら暗殺のドロドロした王位争いとは違うらしい。いや、それも含むんだろうがそれが激化すれば、兵をもって戦火を交えることすらする、ということか。


売り込まれた武器、それらは切っ掛けさえあれば火を吹くことを厭わないだろう




それがないことを願うしかない、しかし先日起こったことを考えれば、いつ起こってもおかしくない
なるべく、先で、先であって欲しい。準備が全然足りないのだ。



「華蓮様!!」


「……どうしました、慌ただしい」


女官が二人駆け込んでくる。一体なにを知らせようというのか


「第一公子が、薨去されました」


何故こうも思った通りにいかず悪いことばかり起きるのか
俺は空をみつめるしかなかった

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空中三回転半宙返り土下座
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