「華蓮殿…」
「あら、旺季様、お久しぶりです。そういえばこの月のお茶はまだでしたね。今お時間ありますか?」
外朝を華蓮のままふらふらしていたら旺季に遭遇する。彼が小脇に抱えているのは
「琴の琴……」
「ああ、先程すこし弾いていた」
もしかしなくとも、俺が劉輝を1人にしてしまったことで、彼が琴奏でることをねだられ、弾いたんじゃ…
なんだか申し訳ない気持ちになる
悪いのはほってでていった俺なのにな……
「ああ、そこの日陰がいいでしょう」
旺季は手際良く机や椅子を準備した。自分も茶を淹れ茶菓子を出す。
「すこし珍しいかもしれません。蜜柑の果汁を寒天で固めて冷やしたものです」
それを人は、寒天ゼリーと呼ぶ。
「サッパリとしていて、夏によいな」
「そうですわね」
まるでどこかのグルメ番組な会話だ。
と、急に旺季は真剣な顔になって言った
「随分なことをしましたね」
それが、女官全員後宮で我王位争いに関せずを貫くことを指しているとわかる
「後宮を預かる身、女官達を態々争いの渦中にいれる真似できるはずないでしょう」
「しかし華蓮殿の立場が……」
「立場? 立場なら筆頭女官、益々そうすべきだったと言いざるを得ませんわね」
旺季はそんな態度の俺に苦い顔をする
「危険すぎる」
「重々承知の上ですわ。それに、敵対する気はありませんし、こちらから手出しもしません」
「だが……」
「…………旺季様、一つ教えて差し上げますわ。私、囲碁より将棋の方が得意ですの」
「…ショウギとは?」
「私の故郷の盤遊びですわ。二つの陣地に同じ駒をもち、各違う動きのできる駒を動かして戦います。王を獲れば勝ち……ですが、この遊びの難しさは、囲碁と違って敵対した駒を獲れば仲間にできること、ですわ。
敵が減って仲間が増える、いいことではありませんか?」
ニコリと綺麗に微笑めば、唖然とした顔をした旺季
ちなみに将棋、王と玉の二つあるが、元々これは『王様』じゃなく『宝玉』の意味を持った駒、宝物の守り奪い合いであって王を囲んだ戦いではないのだけれど
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bkm