後宮に戻った俺は真っ先に女官たち全員を一室に集めた
「華蓮様、お戻りになられたのですか!」
「ええ。それで、現状報告をお願いできますか?」
「……家元の方からや、元親から、家へ帰るようにと。帰って、次の妃候補として今のうちから目星をつけた次期王候補に取り入れと、多くの女官たちが言われております。
華蓮様のお許しがあれば出ていくことが決まっていて…ッ」
全く持って手が早いというかなんというか。
そうして見せられた親元からの文とやらに目を向ける
第二公子いない今、第一公子以外も注目されているらしい。おつむの弱い王なら、妃を通して傀儡にすることさえ可能、か。
それで得たいものが金やら名誉やら地位やらいうんだから、民からすれば御免だっつーの
「私が、それに許可を出すとお思いですか?」
そういって女官たちを落ち着かせようと微笑む
「しかしそれでは華蓮様が危険ですわ」
「親方や本家からの文をことわったと知れれば、いくら筆頭女官の位置にあろうと彼らは手段を選びませぬ、華蓮様はまだ後宮に必要なお方にございます。それにきっとその後ろには覇権握ろうと彩八家が――」
「だからといって貴女達を帰せというのですか? 貴女達は私の大切な女官です。貴女達を危険な目にあわせられません、辞めさせるようなまねはしませんわ」
ああ、でも。と呟く
「父母本家の言うことが正しいと思うのなら帰りなさい。その者達を留めるつもりはありませんから」
ぞくり、とその場の空気が震えた。普段温厚天真爛漫の華蓮しか見たことのない彼女らは、その声の冷たさに寒気を覚えた
いや、なんか。みんなどうした。
みんな固まってる。凍っている。
ちょっと冷たく言い過ぎたかな? でも、帰りたいなら帰ればいいけど本当、危ないし。深くかかわれば死ぬことまちがいなしだし。俺、筆頭女官として俺のことしたってくれてたみんなには死んでほしくないし
「……とにかく、残りたい者は残りなさい。私が必ず守って見せますから」
その言葉に、その空間が黄色く染められた
「華蓮様に私一生お仕えしますぅ!」
「否否、私たちが仕えるべきは貴妃や王ですからね」
「華蓮様〜」
「あらあら、泣いてはお化粧が崩れますわ。きれいなお顔が台無しでしょう?」
「華蓮様とならどこまででも!」
「後宮からでないんじゃなかったかしら…?」
なんかよく分からないが筆頭女官就任前の『華蓮様コール』にも似た状況
そして意外や意外。女官たちは全員自分の意思で後宮に残ると言い張ったのだった
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bkm