「そういえば…櫂兎はその身一つで飛んできたんだな?」
「まぁ…そうなるな。」
無一文である。あ、佳那への愛は忘れずもってきたが
「『友』として、少しくらいなら生計手伝ってやろう」
「本当か?! それは有難いや
『少しくらい』ってところは意地悪いと思うけど。ま、俺も何から何まで一生お世話になりたくなんてねーからな。
あ、住む場所がほしかったりはする。仕事は自分で探すにも、まさかこんな場所で寝泊まりやっかいになるわけにはいかないし。」
「なら街の方に邸を用意しよう」
何だその金持ちのボンボン発言。こわい。
「……広いのは嬉しいけどあんまり豪華なのとかいらないし、召使い家人云々雇う生活する気はないからこぢんまりな、こぢんまり!
あとでちゃんと払うから!高いのやめてくれな!!」
ケチをつけるわけではないが、立派なお屋敷なんぞぽいと建てられては困る。しかも王のポケットマネーだろうと公金であろうとなんだろうととにかく元は税金だろう。そんなの個人宅のためにぽんと無駄にさせるわけにはいかない、自己ローン、後払いだ。
「ふむ、わかった。ではそれが用意できるまでは俺の客人として泊まっていけ」
「ほんとさんきゅー!」
さんきゅ?と首を傾げる殲華
くっ、流石親、劉輝の子犬具合に負けず劣らず可愛い
普段鬼畜らしい王っぷりとのギャップは凄まじいと思うんだ!
まぁ一番可愛いのは妹のなにもかもだが。
「ありがとうって意味だな。俺がいた世界って、言語も、人種も、思想も、色々違いある人間が集まってたから。」
「ふむ。………俺は櫂兎の世界を知らんのに、櫂兎は俺の世界のことをよく知っているように思える言葉だな。」
にやりと見られ、自分の失言たちにしまったとしか思えない
流石は殲華、頭の回転ははやいようだ……
俺はごく自然を装って、あさっての方向に視線を逸らした。
殲華はなにも言わず、目を細め僅かに口角を上げた。
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