進士、下っ端官吏 33
「あの侍童2人増えただけなのにどうしてこう仕事が早く進むようになるんだ」


「あぁ、あの長髪の彼、さりげなくお茶淹れたりねぎらいの言葉くれてやる気出ますもんね」


「それを言うなら眼鏡の彼だって、書類分けるのうまく仕事にとても取りつきやすくしてくれている。しかも処理がはやいときた」


雑用を何気なくこなしていれば、新しく入った侍童、俺たちのうわさが聞こえる
長髪が貘馬木殿、眼鏡が俺だ。




「何故国試にまだ受かってないのか謎の逸材ですよね」


「受かった日には是非刑部に、だな」


そうして話題は別のことに移った。が、





(「…噂になっちゃってますけど、貘馬木殿」)


(「馬鹿、お前のせいだ。棚夏、やることなすこと目立つんだよ」)


(「えー…」)


二人小声で話す。覆面官吏とばれはしないかもしれないが、まずい目立ち方をしたかもしれない

なんか、未来の実力派官吏として期待されてしまったようだ。つまり未来有望な少年に娘を託したいパパさんたちを奮闘させることにつながるわけで


「邑くんは婚姻してるんだ」


「ええ、可愛い妻がいますよ」


「おっ、若いのに熱々だねぇ」


貘馬木殿が平気で嘘だか本当だかわからないことほざいて色々ながしているのに俺はというと


「ええと、その俺、妹まだ小さくて1人にはしてられないので…」


「なら余計に今妹さんにさみしい思いさせてるんじゃないかい?家内だとかいたら変わるだろうが…
そうそう、もしかしたらうちの娘と明くんの気が合えばだね……」


「いや、あの…えっと……」


なんか娘さん勧められる始末。あまりにも俺が不憫だったのか貘馬木殿が話をうまくそらせてくれたので、ボロでたり失礼なことにはならなかったが。



国試状元及第のときもそうだが、こういう話を振られるのが苦手で仕方ない。
きちんと考え返事しようとすればするほど、うまく伝えられないというか。結婚って難しいのなっていうか


きっぱりさっぱり断る理由もきちんとない俺だから、ああなってしまうんだろうが…

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空中三回転半宙返り土下座
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