今日も昨日も、その前も。
変わらぬ調子で仕事しては劉輝のとこに遊びに行ったり、鳳珠や飛翔の仕事を手伝いに行ったり、貘馬木殿にちょっかいかけられたり、黎深の仕事一部奪ってやったりの毎日を送っていた俺。
「……で、今日はどんな用事ですか、貘馬木殿」
ちょっかいかけられ過ぎて恒例になった問いを投げかける。昨日から吏部で、新人進士たちの受け入れが始まりごたついたこのタイミングで。きっと厄介ごとに違いないのは分かるが。一体何だろうか
「棚夏、暇か?」
「俺にそれ訊きます? 答えたら吏部の忙しい方々から筆やら墨入れ書類その他諸々飛んでくるんですよ?」
「つまり暇なんだろ? 丁度いい、仕事をやるよ。ってわけで、ほい、新人」
「………えっと、つまり?」
目の前に急に引きつられてきた一人の新人進士をみる。彼もこうして急な状況に持ち込まれたようで戸惑っている。
「これ、俺が一番見所あると思った新人。覆面官吏に向いてそう。上の位とかは望まずてきとーなとこで働けたら満足するタイプっぽい。でも自分より下と思ってる奴にはつかない。手柄や官位なんて余計なものは気にせずきちんと仕事こなしてくれそうなのが気に入った。好きそうなものは『枇杷の実』『夏の虹』『秋の鈴虫』『降るような銀杏の葉』『雪柳』かな。どう? 当たり?」
次々と言われる言葉にぎょっとする新人進士。わかる、わかるよその気持ち
というか、その好きなものの配列に、何か引っかかるような……
「この進士は棚夏に指導頼む。っていっても書類仕事だけでいい。覆面官吏としての調査の仕方は俺が教えるし、ついでにそのときに棚夏にも教えようと思っててな」
「へえ、めずらしい……貘馬木殿が仕事をするなんて」
「……俺、仕事内容バラせないようなの受けてるから詳しくは言えねえけど、結構大きい仕事抱えて覆面官吏としてあっちこっちいきつつここに顔出してんだぞ?」
「え……」
「うわ、超驚いてるとかその反応ねーわ。でも驚いてるとこ見られてラッキー」
あ、そうそう。と、彼は思い出したように最後につけたした
「いい忘れてた、こいつの名前は楊修な」
その名に、さっきの引っ掛かりの理由はそれかと納得した後、
あんなとんでもないのの指導を俺がしろと?!と頭を抱えた。
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bkm