進士、下っ端官吏 16
定時前に帰らせてくれる上司なんて吏部には貘馬木、彼しかいない。





もちろん、彼も仕事が終わらない部下には帰ることを許さない。ただ、部下一人一人ごとにきちんと仕事を割り振って、それが終われば帰れるという風にしているのだ。部下同士での手伝い、協力は自由。強制はない。


しかもその部下への仕事の采配が絶妙で、個人の力を発揮させる量、質を振るのだ。俺に対してはどちらかというと、その分でやりきれない全体の仕事の予定調和だとかそんな分ばかり回して来るが。
ちなみにその理由も、俺に仕事を与えようとすると他の奴の仕事が全部なくなるからとかほざいてくれやがった。なんつー過大評価だ。


そしてその方針が、俺の性に合ってるってのも気に食わなかった。



「むすっとしてるとシワになんぞー」


貘馬木に眉間を押される


「……某春色と同じことされるとは思ってませんでした」


「春色? 何だそれ。まーいいけど。本当にシワになって寝てる間まで眉寄せることになるんだぞ」


その言葉に俺はつい眉間を撫でた。真っ直ぐになれ、型つきませんように。うん、これから気をつけよう。

その様子をみて貘馬木は噴き出す


「なんですか!」


「いっやー、そんな可愛い反応すると思ってなかったから意外っていうかなんていうか」


ぷくくと笑って貘馬木は口に片手をあて腹を抱える。完全に大笑いモードのようだ。




「……どうでもいいけどもう仕事終わったので帰ります。貘馬木殿もとっとと書類仕上げてくださいね」


「あれ、この前渡したやつ全部終わったんだ。あと半刻は掛かると思ったんだけど…日に日に仕事はやくなってるぞ。この調子だとお前の仕事本当に尚書に毎日差し入れ作るだけになっちまう」


「……なんで差し入れ知ってるんですか」


そこは口笛を吹いて誤魔化された。妙に音感ある、しかも上手い音色を口笛でしやがってくれている。なんというか意外



「じゃ、まあ。お疲れさん」


「ええ、お疲れ様でした」


筆と墨入れも寄せ片付けて席を立った。

16 / 43
空中三回転半宙返り土下座
Prev | Next
△Menu ▼bkm
[ 戻る ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -