俺は今日も黎深の書類でできそうなものをひったくり、クッキーを机に置いてはこなす。これは他の部から回ってきている分や、別の部に回すものなので表は使えない。まあ、使う項目もない。
それも、暫くすれば終わってしまう
「ひーまーだーなんて言ったら忙しい吏部の他の皆様に刺されるかもしれないけどひーまーだー」
べしい、と各々方向から仕事の書類を当て付けのように投げつけられる。それを拾い集めて処理してもとの持ち主に返せば、持ち主達は未処理で返されただけと思っていたせいか書類と俺を交互にみて「こいつ…人間じゃねえ」だとか「ああ、夢か」とか言う。
取り敢えずデコピンしておいた。
「棚夏ってばまじパネー! どーしたらそんなはやくなんの!」
「……これはこれは書類仕事ほっぽり出してる貘馬木 梦須殿」
「…なんかすげー説明口調だしー。まーいいケドー。で、何? あの多種多用で名前もない書類たちの持ち主までちゃんと把握してる棚夏はぁーなーんでそんなに出来る男なのー?」
「…持ち主は書類内容で、今誰がどういう内容やってるか知ってましたし。俺は出来る男なんじゃなくて、やることやってるだけの人間です」
吏部所以か、彼が人を見る目は凄くあると思う。っていうか、気づけるタイプの人間?変に鋭くて嫌になるくらいだ
「それよりこの前の書類仕上げてくださいよ、尚書が仕事しないから唯でさえ仕事が滞ってるのに」
「そうそう、それなんだよ」
ニヤッと貘馬木は笑った。
「人事を司るこの吏部の尚書が仕事してないなんて、位置不適任だと思わねえ? 仕事出来るやつを仕事出来るような場所に配属させんのが吏部だってのに、尚書をあそこに置くってのはまるで、部下にあいつを辞めさせろと言ってるよーなもんじゃん」
そこであっ、とわざとらしく茶目っ気たっぷりに貘馬木は言った
「王サマがあの位置にあの人を持ってきたからか。んー、まぁ分からないでもないなー。あ、べつに王サマに文句言いたいんじゃないんだよ? むしろ思い切りがあるし使いこなせたら最強じゃん?」
どこまで本気で相手すればいいか分からない。取り敢えずはいはいと流す。
「……どうでもいいですけど、なら書類仕事しない貘馬木殿も辞めて下さいます?」
「えー、俺、いい先輩だろ?お前の。だいたい書類ってやつはあー書くこと多くって嫌なんだよ。口でいえばいーじゃねえか口で」
「だからって口だけあなたと分離して各部巡るわけにもいかないでしょう!? 本当、なんであなたが上司なんだか…」
「まま、そのお陰で結構好き勝手できていーだろ」
「それは…」
まあ、その通りだった。
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bkm