1月18日


ツルリ、

あ!しまった!そう思った時には既に遅く、名前のおしりは凍った雪の路面に真っ逆さま。

「まーったく危なっかしいね」
「わ!カカシ、ありがとう」

突如現れたカカシが、後ろから支えてくれて難を逃れる。
どうしてカカシは転けないのだろう。名前が不思議そうにカカシの足を見ていれば、視線に気付いたのか口を開く。

「俺は、名前と違って忍だからね」

だから、氷なんかじゃ滑べんないの。そうカカシは笑った。
実際にカカシはツルツルと滑ることなく、凍った雪の上をスタスタ歩く。名前は、そんなカカシに半分抱えられながら歩いていた。

「私も忍になろっかな」
「名前はだーめ」
「えぇ、どうして?意外と運動神経も良いのよ?」

うーん、そういう事じゃなくてね……とカカシはバツの悪そうな顔をした。正確に言えば、バツの悪そうな顔をしている気がした。

「氷が溶けたら、火影様に頼もうかしら」
「だから、だめだって」
「カカシのけーち」

だからさぁ、そうじゃなくって……。

「なーに、カカシ?」

里のエリート中のエリートのカカシをこんなに困惑させられるのは、きっと自分だけだろう。あ、七班のみんなもそうかもね。名前はひとりでクスリと笑った。

「だからね、俺はさ。名前には、俺が帰る居場所であって欲しいのよ」

そう言ってカカシは、名前を抱えたまま真っ直ぐ前を見てこっちを見てくれなくなった。

これは、告白だ。名前は、カカシが友達から恋人になろうと言ってくれているのだと分かった。長年の親友だったから、これが彼なりの愛の告白だと分かった。

「嫌よ、そんなの御免だわ」

名前の返事に、カカシはえ!?と驚く。

「あ…」
「きゃ!」

その瞬間、カカシの足がツルリと滑った。
道端で大の字になったカカシと、その上に重なる名前。

「ゥ、ウフフッフ」
「もう、笑うなよー」

カカシの胸に顔を埋めて、肩を震わせながら名前はひとしきり笑った。

「やっぱり忍になるのやーめた」
「はぁ……」
「だって、カカシレベルの忍でも滑るんだもの。意味ないわ」

でもね、本当になりたいのは忍じゃないの。

「私がなりたいのはね、カカシのね」

固唾を飲んだカカシは、穴が開きそうなほど見つめる。名前は膝をついて、起き上がるカカシを支えた。

「私はね、カカシのね」

名前は、カカシを押し倒して再び抱きついた。

「ひーみーつー!おしえてあーげない!」

そう言って、カカシの口布を強引に下げたかと思えば、キスをした。

余りにも突然の出来事に、カカシはハッと自分の唇に触れた。そうだ、たった今名前の唇がこの唇に触れたのだ。カカシは起き上がって、名前も立ち上がらせた。

「答えはまた今度ね」
「ねぇ、名前」
「ん?」
「もう一回」
「えー?」

名前は、仕方ないわね。と言って、再びキスをした。

「ん?んん!」

今度は離すまいと、カカシは名前の腰と後頭部に手を回してぎゅうと自分に押し付けた。嫌でも離れない唇に、名前はバタバタと暴れまわる。
どれだけしていたのか分からない、とにかく長い間キスをされた。やっと唇が離れたかと思えば、再びキスをされて、名前は両手でカカシの顎を押し返した。イテテと痛がりながら、カカシは今までになく嬉しそうだ。

「俺、任務でこれから1週間里を出るけど」
「うん」
「必ず帰ってくるから、そうしたら誰よりも最初におかえりって言ってくれる?」
「うん、お安い御用よ」

だから、まず最初に私の所に帰ってきてね。

うん、お安い御用だーよ。

そう言って、カカシは名前の唇にむりやりキスをするとスキップかと思わせるほどの軽い足取りで走り去った。氷の上を走っていくカカシの後ろ姿を見つめた。さっきまでかじかんでいた指先はウソのようにポカポカで熱いくらいだ。

「走れるんだ、すごい」

やっぱり忍になろうかな……名前の小さなつぶやきはカカシには聞こえなかった。





1月18日 end.

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