11月22日
「ちょっと、時間いいかな?」
「え?は、はい」
新しく砂の里で作られた施設の視察帰り。砂の里の出口に、カカシはこじんまりとした店を見つけた。どうやらアンティークの雑貨が売られている店のようだ。扉を開ければ、ベルがカラリンと鳴った。
中に入れば、異国情緒溢れる雰囲気が溢れていた。落ち着いていながらも可愛らしく、連れて来たらきっと気に入って貰えるに違いない。
ガラスのランプや外国語の書かれた瓶。何やら洒落た雑貨が雑然と飾られており、その間を抜けると店の奥に辿り着いた。
奥にはショーケースが並んでおり、上から覗くと木ノ葉では見掛けない珍しい貴石のアクセサリーが整然と並べられていた。そう言えば、結婚指輪を買ってからアクセサリーをプレゼントしていなかったなと思い出す。
「奥様にお土産ですか?」
部下が後ろから声を掛ける。
「んー、まあね」
「本当に、六代目と奥様って仲良しですよね」
「んー、そうかな」
「そうですよ。仲良しの秘訣あるんですか」
カカシはショーケースに肘を掛けて、部下に格好つけた。
「ま、たまにこうやってプレゼントで機嫌をとってやるんだよ」
「へえ……そう、ですか」
「なに、納得いかないの?」
いえ、別に。部下は後ろに下がって少しニヤニヤしていた。自分に威厳が無くなった気持ちになりながら、カカシはカウンターの奥にいる店員に声を掛ける。
「すいません」
はい、と返事をして女の若い店員が仕事の手を止めて、少し急ぎ足でやってきた。カカシはショーケースの中のアクセサリーを指差した。
「この石の付いたブレスレット出してもらえるかな」
「かしこまりました」
店員はポケットからチェーンに繋がれた鍵を出すと、カカシの差したブレスレットを布が張られた盆に乗せて取り出した。
「うん、包んでもらって良いかな」
「はい。こちら、有料ですがお名前が刻印出来ます。如何なさいますか?」
「あら、そうなの。じゃあ、お願いしようかな」
店員はマス目のついた紙を取り出した。キャッシャーに置かれていたペンを握るとカカシの方へ顔を上げた。
「お名前をお願いします」
「うーん、そうだね」
カカシはマスクの下で密かに頬を緩めた。
顔と名前を思い出すだけでこの腑抜けなのだから、部下に笑われても仕方ないなと自分自身で納得する。
カカシの返事が遅く、店員はペンを小刻みに揺らしていた。カカシは悪いね、と小さく謝ってから口を開いた。
「名前で頼むよ。はたけ名前ね」
11月22日 end.
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