口の悪い子


「カーカシ!また入院ね」
「俺の為に来てくれたの?」
「冷血のカカシって呼ばれて友達もいないから来てあげたの。可愛い女の子が来て嬉しいでしょ?」
「そっか」
「もっと感謝しなさいよね。フルーツ、食べる?」
「うん」

そう言いながら、名前はリンゴを器用に剥いていく。皮がシャリシャリと優しい音と共に、綺麗に剥がれていく。手先を見つめる名前の目が優しくて見つめていると、キモいと一蹴された。

「ほら、ウサギちゃん」
「かーわいい」
「ね、カカシには似合わないでしょ」
「ヒドイね……」

名前が、フォークに刺して渡してくれてカカシは素顔に受け取った。頭から食べようか、お尻から食べようか悩んでいると、変なのと笑われた。
カカシの為、とは言ったくせに名前は、ヒョイヒョイとリンゴを口の中に放り込んだ。カカシが、食べ過ぎとからかえば、うるさいとかえされた。

「どうしてさ、無理するの」
「んー?」
「誤魔化さないで」

さっきとは打って変わって、真剣な目で名前はカカシを見詰めていた。眉は八の字に下がり、目は微かに震えている。

「んー、そうだね。名前の為かな」

カカシは、いつもの笑顔で名前の頭をクシャリと撫でた。

「カカシのアホ」
「アホでいーよ」

ホント、アホ!バカ!
と、名前はカカシの顔をペチペチと叩いた。優しい叱咤を甘んじて受け入れる。

「約束して?」
「何を?」
「私との腐れ縁、絶対切っちゃダメだからね」
「うん、頑張る」
「頑張るじゃなくて、絶対なの!」

分かった、約束するよ

抱き寄せた名前の耳元に囁やけば、名前の頬が赤く染まり、唇が何かを求めてキュッと結ばれる。

「名前……」
「カカシ……」

名前の後頭部に手を添えて、カカシは頬を寄せた。名前の手が震えて、かわいいなと和んだ。

「こ、このエロオヤジ!」
「え!?」

名前は、カカシの頬をバーンと叩いて後ろに飛び退いた。間髪空けず、病室のドアを開け放つ。

「ごめーんね、名前」
「うるさい!」
「ハハ」

ドアに手を掛けたまま、名前は顔だけをカカシに向けた。

「次、合意なしに勝手にそーゆーことしたら火影様にセクハラ訴えるから」
「合意あれば、良いってことね」

名前は、顔を真っ赤にしてバーカ!と言って病室を出ていった。

「まー、可愛いじゃないの」

残ったウサギちゃんをシャリと、1口かじってカカシは一人で静かに笑った。

「さーてと、寝るか」

今夜は良い夢が見られそうだ、とカカシは笑って布団を被った。 

「ちゃーんと、聞こえてたよ」

病室を出て行く時、名前の囁きに。
可愛いから、聞こえたことは黙っておこうと思った。

ーバーカ!ずっとそばに居てあげるー





口の悪い子 end.

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