人形姫・15



ナルトが自来也と共に修行の旅に出ていって数週間が経った。
それより少し前にサクラが綱手に弟子入りして、執務室は前よりも賑やかになった。

「名前、これを頼むよ」
「はい、綱手様」
「サクラ、重いから手伝ってやれ」
「はい!」

執務室を出て、資料室に向かう。重い本を持ってくれたサクラが、名前の体にぐいと近付く。その表情は、雑用を頼まれたにしてはヤケに楽しげで、何か企みがあるに違いない。

「な、なに?」
「カカシ先生とはどうなんですか?」
「え?」
「だって、カカシ先生、名前先生とのこと全然教えてくれないんだもの」

真面目に修行を頑張る姿は、とても立派で子供には見えないが、恋愛に興味があるのは14歳の少女だなと感じる。

「うーん、普通だと思うよ?」
「キスは1日何回するんですか?」
「え、えっと……」

やっぱり行ってきますとお休みなさいはマストですよね!あ、おはようとただいまもしますよね!そしたら、4回は最低するのか!
デートは?手は繋ぐんですよね?やっぱり二人きりの時は優しいんですか?好きだよとか言ってくるんですか?
矢継ぎ早に質問が飛んで来て、名前は口籠る。
そんな名前の反応を照れと判断したらしい、サクラはきゃーと嬉しい悲鳴をあげた。

「きゃー!名前先生可愛いー!」
「だ、だって……」

自分にとって14歳なんて、たった4年前のことなのに、思春期真っ只中の女の子にはタジタジだ。同じ女でこれなのだから、カカシはもっと大変なのだろう。

「逆に、カカシ先生はみんなと一緒の時どうなの?」
「えっと、面倒くさいことは全部私達に押し付けて本読んでるんですよ!でも、何かあった時絶対に守ってくれるんですけどね」

カカシの話をするサクラの顔が楽しそうで、名前は幸せな気持ちになる。カカシが教え子のことが大好きなのは知っているから。

「カカシ先生ね、サクラちゃん達の話をするときは本当に嬉しそうな顔をしてるのよ。大好きなのね」
「えー、それならもっと普段から出せば良いのに」
「照れてるのよ」

カカシ先生って、忍術も体術も全部抜群なのに、そういう所は不器用なんですよね。サクラは、呆れながら、でもそれが良いかのように言った。
資料室に書物を戻し、再び執務室に戻る。その間、綱手様にこんな事を教えて貰ったとか、アカデミーの頃と変わらない自慢げな表情で語る姿がたまらなく愛しく思えた。
昔よりも自信に溢れて来た、と名前は思った。

「師匠、戻りました」
「おかえり、サクラ、緊急任務が入った」
「はい、分かりました!」
「カカシが隊長だ。これを渡せ」

サクラは手袋をはめて、綱手から受け取った巻物をポーチにしまった。名前に笑顔で行ってきます!と言って出ていこうとした時だった。

「あ!そうだ!」
「ん?どうしたサクラ?」
「まだ名前先生達の話聞いてない!帰ってきてから聞きますから!」
「う、うん」
「いいから早く行け!」

キャッキャと笑いながら、サクラは姿を消した。
名前は、困ったなぁと照れ笑いをするしかなかった。





「先生おっそーい!」
「いやー、渋滞に巻き込まれてね」
「忍には関係ないじゃないですか!」

サクラのツッコミをへらへらとかわし、カカシは門を出る。

「先生、綱手様からです」
「ありがと」

巻物を受け取り、カカシは中身を軽く確認するとポーチにしまった。

「さっき名前先生と一緒だったんです」
「へぇ、そうなの」
「ふーん、つれない反応ですね」

サクラが、何かを企んだ笑顔でわざとらしく明るい声色をあげた。

「先生達ってラブラブなんですねーびっくりしちゃった!」
「ん?何の話をしたのよ?」

思わず言葉を重ねるように問うてしまえば、サクラは楽しそうにニンマリと笑った。そして、両手を口元に当てて、再びわざとらしく言うのだ。

「えー、私の口からは言えないです!」
「…………」

女同士で何をしているか分かったもんじゃないな。
隠したいことがある訳でないが、名前とサクラは歳も近いし、きっと男達が聞いてはならないような話をしているんだろう。

「はあ、好きにしなさいよ」
「やったー!カカシ先生がどれ位名前先生のことが好きか調べさせて貰いますから」
「そう言うことじゃ……」

サクラは、ほくそ笑んだ。
名前の口が思ったより固く、こうなったらカカシから聞き出すしかないと思ったのだ。カカシの弱点は、名前の存在であることはサクラからも明白なのだから。

「さて、そろそろ任務に集中するよ。サクラ」
「はい!」

話の続きは、任務が終わってから。
サクラは、少しずれてしまった手袋をはめ直した。





サクラがいなくなってから、名前は黙々と仕事を続け、いつの間にか定時になっていた。

「綱手様、シズネさん、お疲れ様でした」
「うん、ご苦労」

忘れ物がないか確認して、カバンを持って執務室を出た。

帰り道、突然、ゴホゴホと咳が出る。
家に帰る頃には何となく体もだるくなってきた。さっとシャワーを済ませるとすぐにベッドに入った。
寒気が止まらず、熱を測ってみれば38度。これは風邪だ。最近、忙しかったしなぁ。ちゃんと寝よう。布団を深く被って、名前は眠りに就いた。


ー43ー

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