人形姫・14



「えぇ!ナルトくんが?」
「そうなの、サクラに見送りをしようと提案されたんだけど、俺はそう言うのが良く分からないから名前にも手伝って欲しいんだ」

来週にはナルトが里を長い間出る、七班として見送りをしたいからと言うことで、それを名前は手伝うことになった。しかし、カカシは任務で相変わらず忙しく、実質はサクラと名前で準備することとなった。

色々案は出たが、結局、カカシの家でみんなでパーティーをすることになった。ずっと、ナルトは幼い頃からひとりで家で暮らして来た。だから、家族の代わりにはなれないけれど、団欒と言うものを里から離れる前に感じてほしいと思ったのだ。

昼間はカカシが修行をつけて、ナルトが夜に一楽に行かないように根回しをし、お腹を減らす作戦を立てた。
今頃、カカシとナルトはどこかで修行をしているんだろう。その間に、名前とサクラは買い出しをしていた。

「ナルトくんが出てったら、寂しくならない?」
「あいつも頑張ってるんだし、私も頑張んなきゃって思ってるんです。寂しいとか言ってられません」

サクラちゃんは凄いわね、と名前は素直に言葉が出た。アカデミーで仕事をしていたから先生と呼ばれているだけで、ナルトやサクラの方がずっと自分よりも立派だと感じていた。
目標があって、夢があって、それに向かってちゃんと頑張っている。この世界に来てから、ずっと生きるだけで必死だったけれど、里のみんなのお陰でやっと余裕も出てきた。
ずっとここに居たいと思うし、里の為に生きて行きたいとさえ今は思う。

「私も……夢見つけようかな」

私もみんなに負けないように頑張らなきゃ、と名前がサクラに笑い掛ければ、サクラは名前に向かってウィンクを返した。

「名前先生は、カカシ先生のお嫁さんでしょう?あ、でも、カカシ先生は名前先生まっしぐらだから絶対結婚しますよね!」
「え、どうかなぁ」
「結婚しますって!名前先生は、まだ若いからカカシ先生も何も言わないだけですよ!絶対!」
「うーん、そうだと良いんだけど」

普段、買い溜めはしないため、4人分の食材を買えばかなりの量になった。殆どを、先生には持たせられないからとサクラが持ってくれて、名前は卵やケーキなどの壊れやすいものだけを持って自宅に戻った。

「名前先生って料理上手なんですね」
「ううん、前のお仕事をしていた時は料理は他の人にして貰ってたから、ちゃんと作り始めたのはここに来てからだよ」
「へぇー器用なんですね」

昨晩仕込んだ唐揚げやハンバーグ、カカシにリクエストされた野菜がたっぷりの料理を作って行く。名前は、お母さんがよく作ってくれた料理を思い出していく。
きっと、こんなに優しい気持ちでお母さんは自分達に料理を作ってくれていたんだ。ナルトにも、この気持ちが伝わるだろうか。





「よーし、今日はこれで終わり」
「は、腹減った……」

地べたで大の字になったナルトの顔を覗き込みながら、カカシはニコッと目を細めた。

「頑張ったご褒美に、今日は特別な飯を食わせてやる」
「え!?ラーメン!?」
「それは普段から食べてるでしょうよ。それも良いけど、今日は違うよ」

ナルトの目がキラキラと輝いて、カカシも何だか嬉しくなった。

「あれ?ここって確か」
「ん、俺の家」
「カカシ先生が作ってくれんのか!?」

カカシは、まぁまぁと言いながら玄関を開けた。ナルトに先に入る様に促す。

「おじゃましまーす」
「ナルト!おかえり!」
「ナルトくん、おかえりなさい」

エプロンを掛けた名前とサクラが立っていて、ナルトはふたりを何とも言えないマヌケ面で見つめた。

「ほら、ナルト、おかえりって言われたらどうするの?」

カカシに小突かれ、ナルトは我に返った。

「あ、えっと、ただいま……だってばよ」
「うん、ごーかく」
「ナルトくん、入って入って」

みんなで部屋の1番奥にあるリビングに進めば、テーブルいっぱいに料理が並んでいた。

「うわー!すげー!」
「これ全部、サクラと名前が作ってくれたの。里を出る前にお前をみんなで見送りたかったんだ」
「サクラちゃん!名前先生ありがとう!すげー嬉しい!」
「いっぱい食べてね」
「残しちゃダメよ」

テーブルについて手を合わせる。いただきます!とナルトに合わせて元気よく言えば、ナルトが1番に箸を手に取った。

「ちゃんと噛みなさいよ」
「分かってるってばよ!」

唐揚げの山の1番上を取り、口に運んだ。

「ナルトくん、どう?」
「うまい!名前先生、天才だな!」

ほっと胸を撫で下ろし、名前も食事を始めた。
カカシとどんな修行をしたのか、自来也と一緒にいるとロクなことがないだの、里を離れると一楽が食べられないのが寂しいだの、ナルトはお行儀が悪いわよ!と怒られながらも、楽しそうにしてくれている。
カカシは安定して、サクラとナルトが見ていない隙に食べているらしく、気付けば皿が空になっている。何が彼らの攻防戦をこんなに熱くさせているのか、名前には不思議に映ったが、それも彼らの絆のひとつなのだろうと思った。

サスケが里抜けした直後はカカシは勿論、ナルトもサクラも目も当てられない状況ではあったが、今は笑ってくれている。
ひとりの時にはきっと枕を濡らす夜もあるのかも知れないが、この僅かな時間でも楽しいと感じてくれれば良いと思った。

みんなでワイワイと突っつきあえば、あっという間に皿は空っぽになった。やっぱり、みんなで食べる食事は特別美味しい。

ナルトはお腹いっぱいになったのか、床に寝転んで眠ってしまった。名前は、空になった器をサクラと共に洗う。

「床じゃ風邪引くから、俺のベッドで寝かせて来る」
「うん、ありがとう」

カカシはナルトを自分のベッドまで運び、布団を掛けてやる。

「本当に、良く頑張ってるよ。お前は」

幸せそうに眠るナルトを、カカシは見下ろしながら頭を撫でてやった。寝言で擽ったいと言われて、カカシは笑うしかなかった。寝室から出れば、サクラが玄関に立っていた。

「サクラ帰るのか」
「うん。お父さんも心配するし。カカシ先生、名前先生ありがとうございました」
「ううん、こちらこそありがとう」
「ありがとな」

サクラが去り、名前とカカシは順番に風呂に入った。
まだナルトが目覚める様子はなく、起こすのも可哀想だから、このまま泊まらせることにした。

「俺達も寝ようか」
「うん」

名前のベッドに共に入り、今日はありがとうとカカシは名前に礼を言った。

「あぁ、楽しかったなぁ」
「うん、俺も」
「それにしても、本当に素顔を見せないのね。私も見れなかった」
「まあね、別に見せても良いんだけど。それじゃあ、つまんないでしょ?」

ナルトが隣の部屋にいるからと、ふたりは唇を軽く重ねておやすみを言った。





それから少しして、ナルトは自来也と共に里を発った。

カカシもサクラも共に門で見送りをした。次会う時には、名前先生が惚れる位に良い男になってるからな!と宣言をされた。名前は楽しみにしてるね、とナルトの額に優しくキスを落とした。

その後、一緒に帰宅したカカシが拗ねてしまい、機嫌が治るまでキスをし続けなければならなくなったのはふたりだけの秘密だ。


ー42ー

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