涙を流した悪魔 | ナノ

聖夜と悪魔と、私(2)







「あ、あの…」

「ちょっと付き合え」


言われるまま切原先輩について行った。外はもう真っ暗。私たちが学校を出る頃には時計は7時を指していた。

電車に乗っていくつかの駅を通過して、名前も知らないような田舎の駅で降りた。

山道を少し歩けば、見えてきたのは街一面のイルミネーション。キラキラと赤や青、緑や黄色の綺麗なイルミネーションが見える。


「きれい…」


思わず口にしてしまうくらい綺麗な景色に一瞬で心を奪われた。こんな景色は私の住んでる町では見られない。


「あの…切原先輩、何でここに…?」


私がそう聞くと、遠くを見ながら冷めきった目でその景色を見下ろしていた。


「くっだらねぇな…」

「え?」

「暗闇がないと輝けねーのに、俺の周りの女はそんなことにも気付かず自分が輝いていると勝手に勘違いしてる」

「…」

「群れなきゃ輝けねぇ、引立て役がいないと輝けねぇ。…俺はそんな奴らとは違うんだよ」


切原先輩が何でこんな話を私にするか分からなかった。ただ一瞬だけ悲しそうな顔をした切原先輩の表情が印象的過ぎて、私は驚きながらも黙って話を聞いていた。


「俺は暗闇にも光にもなれる。あんな雑魚達と一緒にされてたまるかよ」

「雑魚…?」

「俺に声をかけてくる馬鹿女達だよ。俺も周りの奴らからクソ女達と同等に見られてるのがムカつくんだよ」


恐らく、最近クリスマスに託つけてみんなが切原先輩をひたすらに誘う事について言っているのだろう。

黙って聞いているつもりだったのに、自然と口をついて出てしまった言葉。


「切原先輩には、闇より光の方が似合ってますよ」


文字通りあなたは輝いている人に、違いないから。



切原先輩は驚いたように目を開いて、それからいつもの余裕そうな笑みを浮かべて「当たり前だろ」と私に返したのだった。





今が、クリスマスイブの夜に切原先輩とイルミネーションを見ている現状だなんて、今の私には全く考える事が出来なかった。





20120105




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