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「島が見えたぞォォー!」
リュウガが上を見た途端、
見張り台に上がっていたハヤテが、進行方向を指差しながら、なおも声をあげている。
誰もがサッと振り返り、急いで船べりに走った。
見れば水平線の彼方に、黒い何かがポツンと見える。
それは2つの島。
灰色の島とグリーンの島は…
雄島と雌島に違いない。
(とうとう来ちゃった‥‥)
リュウガがさっき言ったのは、このことか。
船べりを掴む手に、ギリりと力が籠もってしまう。
どくん、どくん‥‥
心臓が早鐘を鳴らしだす。
リュウガも島を確認すると、横で声を張り上げた。
「よぉーーし!全員準備に取り掛かれー!」
おおおぉぉー!
それを合図に、クルーが一斉に走り出す。
メインマストに走ったトワは、上にむけて両手を振った。
「ハヤテさん、早く早くッッ!」
見張り台のハヤテは分かってるよと双眼鏡を手にスルスルとハシゴを降りてくる。
床にトンと足をつくと2人は風を受けてはらむ帆を、ロープを引いて畳み始める。
「え‥‥?」
その姿に思わず●●●は唖然とした。
確かに島は見えたは見えた。
けど、港までは距離がある。
そこにナギが駆けて来て、肩を掴んで振り向かせた。
「お前は先にキッチンに行ってろ!」
「あ」
でもッッ!
ナギはそれだけを言い残し、船首へ向かって駆けて行く。
その背中を見ていれば、今度はソウシが駆けてきた。
「そういうことだから、少し待っててくれるかい?」
「‥‥ソウシ先生っ」
いつもの笑みを顔に浮かべ、ソウシも
ナギを追いかけ行ってしまった。
「‥‥どういうこと?」
伸ばした手が空を切る。
二人の背中を見つめる●●●は不思議そうに首を捻った。
ナギとソウシは船首につくなり、右舷、左舷、両方の、重たい碇を下ろし始める。
振り返れば、シンはすでに舵から離れ
リュウガは…船長室に入っていく。
「いったい何が起きてるの?」
気づけば大海原の真ん中で、止まってしまったシリウス号。
しばらく様子を伺うも、どうしていいのか分からない。
頭の中ではあの声が、さらに声を荒らげて
金髪の人が誰なのか…
胸のどこかに引っ掛かる。
それでも答えが出るはずもなく、ポツンとその場突っ立つ●●●は
仕方なく言われた通り
ひとりキッチンへ向かった。
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