危うい天使 | ナノ
第3話
「いやっ!!手を離してッッッ!!」
「なあ……そんなとこにいないでさァ〜一緒に気持ちいことしようぜ?」
「いやよッッ!!!あっちに行ってッッ!!」
「ハ、…2人とも怯えちゃって、かーわいい♪」
「諦めな?家にはもう、帰れねえんだ」
岩陰に身を潜めて、ゆっくり4人に近づく。
岩の上では泣き叫ぶ少女達が、腕を掴まれそれでも必死で抵抗している。
(……許せない)
●●●は震える両手で棒を握り、彼らの後ろに飛び出した。
「あ……あなたたちッ!」
『ああン?』
腕を掴む男が振り返る。
「その手を放しなさい!!」
瞬間●●●は、ぎゅーと固く目を瞑り、握った棒を男に向かって振り上げた。
「…狽ネ、…っっ!!!」
思いっきり振り下ろした棒は、けれど男の肩をかすめただけ。
しかし幸か不幸か、男は少女の手を放し、大袈裟にそこを押さえて見せた。
「……いってえなァ…」
「おい、大丈夫かよッッ!!」
もう1人の男も少女を放して、男に駆け寄る。
「(…今だ!)」
●●●は立ち尽くす少女達に向かって、大声で叫んだ。
「今よッ!早く逃げてッッ!!!」
「え、あ……はいッッッ!!!」
2人はハッと我に返って、勢いよく駆け出す。
男の脇をすり抜け自分に向かって駆けてくる少女達。
「お姉さんはッッッ?!!!」
「私はいいから早く行ってッッ!!!」
両手で棒を構えたまま、●●●は視線だけで合図を送る。
その気迫に2人は1つ頷いて、海岸めがけ走り出した。
「てめっ!ガキが逃げちまったじゃねえかよ!!」
「――ダメッ!!!」
追いかけようとする男を見据え
……行かせない
●●●は棒を構えたまま、ゆっくり後ろに後ずさる。
チラと視線を後ろに投げれば、海岸を走る2人が見えた。
(あそこまで行けば安心ね…)
ホッと息をついたその瞬間。
「てめっ、なにしてくれたんだよッッッ!!!」
男の手が襟を掴み、そのまま岩場に投げ飛ばされた。
「きゃっ!!!」
ザァッッッ――
ゴツゴツした岩肌が、容赦なく皮膚を削っていく。
手から放れた木の棒が、カラカラと崖の下へと落ちていった。
「………いっ…」
すぐに流れる真っ赤な血。
倒れたカラダを起こそうと、顔を顰めて手をつく。
男は●●●を引っ張り起こし立たせると、背から、羽交い締めにして押さえ込んだ。
「く………」
「あ〜あ、アイツら逃げちゃったからさァ〜〜代わりにアンタが責任とってよ…」
耳に口を寄せ、囁く男。そのまま歯が、耳を噛む。
「や!」
顔を上げれば、さっき棒で殴った男が、正面から近づいてきた。
片手で肩を押さえながら、ニヤリと笑うその顔に、背筋がゾッと凍りつく。
「いやッ!!この手を放してッッ!!」
指先から、ポタリポタリと滴る血。
構うことなく抵抗する。
ゆらりと近づく男の口が、く、と微かに吊り上った。
「ガタガタ暴れてんじゃねえよッッ!」
その瞬間。
男の平手が、思いっきり頬に振り下ろされた。
「………っ、」
唇の端から、ツー…と血が流れていく。
鉄の味が、口いっぱいに広がった。
「こっち向けよ」
「………」
男の手が顎を掴み、顔を上に向かせる。
睨み付ければ、男は顔を近づけた。
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