危うい天使 | ナノ
第2話
リュウガが出て行って数時間が過ぎた頃――
買い出しもなく時間を持て余す●●●は、船の脇に続く海岸にいた。
「ふふっ……」
鼻歌でも歌い出しそうな顔でしゃがみこむ彼女の手には、袋に入った数個の貝。
「いっぱいとってナギさんにお料理してもらおっと…♪」
振り返ればすぐそこで
同じく時間を持て余すシンやナギ。ソウシやハヤテが、港にいた男達と、航路について話ている。
「まだ、平気だよね♪」
時々、振り向き振り向きしながら、●●●は夢中になって貝を拾った。
・゚ ゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
しばらくして顔を上げれば、ずいぶん遠くまで来ていたようで。
港に立つクルー達が豆粒ほどに見えている。
「そろそろ戻らなきゃ…」
いくら姿が確認できるとはいえ、ここは危険な島。
立ち上がって服の砂を払ったその時――
「キャァァー…やめてッ!!」
「こっちに来ないでッッッ!!!」
近くから女の悲鳴が聞こえてきた。
「え?」
慌てて声の方へ振り返る。
近くの小高い岩の上に、若い男2人組みが、同じく少女2人組みに迫っているのが見えた。
岩の先端に追い詰められ、手を取り合って泣き叫ぶ少女は、14.5歳のまだ子供。
「……どうしよう……」
カシャッと袋が足元に落ちる。
●●●の脳裏に今朝がた言われた、ソウシとナギの言葉がよぎった。
――さらわれた女は
金持ちに売られる
「やだ大変ッッッ!!!早くみんなに知らせなきゃ!!!」
駆け出した瞬間、足が止まった。
捻挫をした足首が、悲痛な悲鳴を上げたのだ。
「………」
立ち止まって見つめる先にはクルー達がいるものの。
引きずる足で引き返すには、思う以上に距離がある。
「……間に合わないよ…」
もう1度振り返ったそこには、岩から落ちそうな所まで、追い詰められた少女達。
焦る●●●は、うんと1つ頷いて、近くにあった木の棒を拾い上げると静かに岩場に近づいていった。
※
← →
[戻る]