鈍感
「・・・はあ」
「どうした、セピア。溜め息なんかついて」
「・・・なんでだと思う?」
「・・・なんでなんだ?」
「それはこっちのセリフよ!
なんでアンタは毎日ウチに来るの!?」
「幼なじみだからだろ?」
「・・・はあ」
人の顔見て溜め息つくな、と心の中で突っ込みながら、
目の前の菓子をつまむ。
オレが今いるのは、幼なじみであるセピアの家だ。
先ほどセピアが言っていた通り、
オレは毎日この家に来ている。
理由は一つ。
オレが、セピアのことを好きだからだ。
菓子はあくまでついでだ、ついで。
いくら21歳で成人してるからって、
好きな奴に毎日会いたいってのは何歳になっても変わらない。
「・・・アンタ、もしかしてお菓子目当て?」
「・・・さぁな」
「ま、別にいいけど」
しかし、幼なじみの壁はけっこう高いわけで。
今も男と家で二人きりだってのに、コイツは警戒していない。
それはつまり、オレを男として見てないわけで。
「・・・はあ」
「ちょっと、人の家に来て溜め息つくのやめてくれない?」
おまえが原因なんだけど、とは言えずに
もう一度溜め息をつく。
「・・・アンタさぁ」
「ん?」
「いい加減、彼女でも作ったら?」
ぐさり。
まさかの言葉に、顔には出ていないが思考が停止する。
・・・このやろ、
「・・・なんでだと思う?」
「?」
「なんでオレは彼女作らずにセピアの家に来てると思う?」
「それは・・・」
ここまで言えばさすがに気付くだろう。
期待と不安を交えながら、セピアを見る。
「・・・」
「・・・」
「・・・実はフレンが好きだから?」
「は、」
「だってユーリってば基本フレンの話ばかりだし」
・・・駄目だ、ここまで鈍感だとは。
つーかフレンはねぇだろ。男ってのを考えろよ・・・。
オレの想いが伝わるのはまだまだ先のようだ。
(・・・はあ)(なによ)
(・・・なんでもねぇよ)
(?)
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