現実
「・・・・え?」
「なんでオレ、ハルルで寝てんだ?」
何?何がどうなっているの?
「ねえ、私のこと、わかる?」
「は?いや、だからさっき誰だって聞いたじゃねえか」
そんな。
ユーリが、私のことを忘れてる・・・?
いくら悪戯好きなユーリでも、こんなたちの悪い悪戯はしない。
それに、ユーリの瞳をみればわかる。
彼は嘘などついていない。
私はわかってしまった。
ユーリが記憶喪失なのだと・・・。
「え、と・・・。この世界のことはわかる?」
「テルカ・リュミレースだろ?」
「じゃあ自分の住んでいた街は?」
「ザーフィアスの下町」
「・・・今まで何してたか覚えてる?」
「何でここにいんのかは知らねえけど・・・。
仲間達と一緒に旅してたな」
「・・・・」
ユーリが記憶喪失だとわかってから、私の頭は混乱する・・・
はずだった。
仮にも自分は医者。そのことを無意識に思い出し、
『医者』として、今はユーリに質問をしている。
そして、質問をしてわかったことがある。
それは、ユーリは私だけを忘れているということ。
記憶喪失にもいくつか種類はあるが、
一部だけを忘れる記憶喪失は初めてだった。
しかも、その一部が自分だなんて。
私の心は、この受け入れがたい現実を、しかしどこかで肯定していた。
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