幸福
「うわー!綺麗!」
「だろ?」
「うん!ありがと、ユーリ!」
あの後急かすユーリに慌てて準備をした私は、
下町を出て花の街ハルルに来ている。
見たことがない巨大な樹。
ヒラヒラと舞うピンクの花びら。
何もかもが新鮮で、何よりユーリと一緒に見れたことが
一番嬉しい。
綺麗な樹に見惚れていると、ユーリは優しく微笑みながら
私の手を引いて樹の下まで連れていってくれた。
「旅にでて良かった・・・」
「そりゃよかった」
「こんな綺麗な街があるなんて知らなかったよ」
「ま、おまえの方が綺麗だけどな」
「・・・もう」
まったく。何でそういう歯の浮くような言葉がすらすらと言えるかなぁ・・・。
しかも狙って言ってるんだから、たちが悪い。
「セピアー、顔赤いぞー」
「・・・うるさい」
でも、こんなやり取りも久しぶり。
ユーリが旅に出てからはずっと一人。
当たり前のことがとても嬉しくて・・・。
こんな幸せがいつまでも続けばいいのに、そう思った。
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