音響
「そこでフレンが・・・」
「・・・ああ」
宿に入り、始まったのはエステルの
城での話。
しかし、オレの頭には何一つ
エステルの言葉は入っていない。
今のオレの頭には、彼女のことでいっぱいだった。
あまりにも生返事が多かったのか、エステルは頬を
膨らませて少し怒っていた。
「もう!聞いてます?ユーリ!」
『ちょっと、聞いてるの?ユーリ!』
「・・・?」
エステルの言葉のあと、誰かの声が頭に響く。
(誰の声だ・・・?)
「・・・もしかして、傷がまだ痛みます?」
『まだこの傷痛い?』
・・・まただ。
エステルの言葉と、誰かの言葉が重なる。
「大丈夫です?」
『大丈夫?』
・・・いや、オレはこの声を知っている。
この優しく、暖かい声は・・・・・。
『ユーリが傷ついたら、私が治してあげるよ』
「―――――っ!!」
「・・・ユーリ?」
「・・・悪ぃ、オレちょっと戻るわ」
その声に気付いた瞬間、
オレの足はすでに動いていた。
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