『ただいまー』
「お帰りなさい。あら?天馬は?」

辺りもすっかり暗くなった頃、悠那は木枯らし荘に一人で帰って来ていた。丁度玄関の方を通った秋にただいまと言えば、一人だった事に疑問を持たれ始めていた。それもそうだろう、殆ど自分と天馬は一緒に帰って来ていた仲だ。一人で帰ってくるという事は何らかの理由があってからこそなのだ。

『忘れ物を取りに行ったよ。多分もうそろそろ帰ってくると思う』
「そうなの。あっ、夕飯出来てるわよ」
『はーい!』

悠那は履いていた靴を脱ぎ、鞄を自分の部屋に女子ながらも放り投げてしまう始末。だが、あの紙飛行機だけはずっとスカートのポケットに入れていたのか、そこから取り出してそっと机の上に置いた。この紙飛行機は一度も手放した事が無い。肌身離さず持っていた紙飛行機。暫くその紙飛行機を見ていた悠那は、自分の部屋から出て洗面所へ向かい、ちゃんと手を洗ってから食堂へと向かった。

『あ、そうそう秋姉さん。今日…』
「ん?」

守兄さんが来て新しい監督になった。と言おうとしたが、きっとテンションが上がっていたであろう天馬が秋に報告をすると思う。
確か天馬は秋姉さんて守兄さんが同級生だった事を知らない筈だ。反応を見てみたいな…

『やっぱ何でもない!いただきまーす!』
「えー?」
「ただいまー!」

秋は悠那の意味深な言葉にコップに水を入れながら聞き返そうとするが、それは天馬が良い時に帰ってきた事により遮られた。
多少の疑問を持ちながらも秋は天馬の出迎えをする為に玄関へ。悠那が目の前の食べ物を口に含もうとしたその時だった。

「ええ―――っ?!」
『ぶふっ!!』

やはり天馬は悠那の期待を裏切らなかった。きっと秋が円堂の事を知ってるのを本当に知らなかったらしい。あまりの驚きっぷりには悠那も吹いてしまったが、後で天馬に何で教えてくれなかったのさ!と説教を食らった。

『だーって、面白そ…げふんげふんっ、言うタイミングも無かったし…』
「あー!今面白そうって言おうとしたー!!」
『(うるさい〜…)』




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