『じゃあ、私もー』

と、ノリにも真剣な表情をしながら神童の背後からスライディングを掛けてボールを奪おうとするが、やはりどうしても取れない。
パスカットやドリブルは得意だけど、あとはどうしても微妙だ。そこはフィディオ兄さんにも直せと言われたのを覚えてる。自分のスライディングの弱点はスライディングをした時にどうしてもスピードが下がってしまうとこ。

なら、

『これなら、どうだ!』
「…っ!」

スライディングの体制から一度後転をし、そのままの勢いで神童が空中でボールを持った状態で悠那の足はそのボールへ向かって蹴り出した。自分の足は微かにボールを掠ったが、神童の瞬時の判断でボールを奪われる事は無かった。
悠那の体はそのまま仰向けに倒れてしまい、体の殆どを地面にぶつけてしまった。

『いった〜…』

やはり、スライディングからの体制直しは難しいな、と苦笑しながら立ち上がる悠那。
だが、今のは惜しかったなーと内心舌打ちをしながら、再び天馬や信助のようにしつこくボールを奪おうと突っ込んだ。

「どれほど頑張ろうと、手に入らない物がある」
「まだ…まだです!」
「諦めなければ…願いが叶うと思っているのか!!」
「はあ…はあ…っ、はい!!」
『はい…!』

「ッ!お前達は何も分かっていない!!」

膝に両手を付きながら上がっていく息を整える天馬と悠那。足りない酸素を必死に吸い込みながら神童の言葉に何の迷いも無く、ハッキリと答えた天馬と悠那に神童は今回で二度目となる怒りを再びボールに当たり、天馬の方目掛けて蹴り出した。
そこで、やっと悠那はいち早く反応が出来た。

神童が蹴ったボールは、天馬に当たる寸前に悠那が片足で当たるのを阻止して、そのままの勢いで片足に力を込めて蹴り返した。
シュートに近い神童の蹴りに、更に自分の力を加えて自分の視線の奥にあるゴールネットへ向かって神童の顔の横を通り過ぎ、そして三国の真横を通り抜けた。ゴールネットに当たり、やがて力を失ったボールはテンッテンッと転がって三国の足へとぶつかった。
その事に驚き、目を見開く先輩達の姿が目に入った。
悠那は神童を黙って眉間に皺を寄せながら見ていたが、特に何も言わずにそのまま自分の後ろに居る天馬の方へと振り返った。

『…大丈夫?天馬』
「う、うん…ユナこそ…」

大丈夫大丈夫っと指をピースにしながら天馬の言葉に答えた。それを見た天馬は安心したように、悠那の方へ倒れてきた。
どうやら今まで殆ど自分の本能で動いていたらしく、悠那はいきなり体がこちらに倒れてきたので、慌てて体を支えた。立ったまま支えるのはきつかったので、そっと膝を付き天馬をその場に座らせた。それと同時に葵と信助が心配するように駆け寄って来た。

『全然だいじょばなかったじゃん』

と、天馬の腕を自分の肩に回し、まだ意識のあった天馬を立たせた。悠那の言葉に少しだけ乾いた笑いをしながら立てば、フラッと体が傾いた気がした。
そんな天馬を支えながら呆れていれば、信助と葵が自分を含めて心配をしてきてくれた。その時だった。

「それまで。入部テスト終了!」

久遠のテスト終了の声かけがグラウンドに響いた。

…………
………


prevnext


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -