環の先輩達に理由を言って女子更衣室で着替える事が出来た悠那。バスケ部の先輩はとても優しく接してくれ、思わず拝んでいた悠那。しかもまた来ても良いという有り難い言葉を貰い、ジャージに着替えた悠那はしつこいぐらいにお礼を言った。環にも先輩達にもテストの事を応援され、更にやる気が出てそのやる気が消えない内に急いで第二グラウンドへと向かった。

グラウンドに行けば、何やらもう何かが始まっていた。(とは言ってもただ並んでるだけだけど…)これはヤバいと、悠那は急いで階段を降りて、久遠の方へ走った。

『遅れてすみません!!』
「あ、ユナ!!」

悠那が来た事に天馬と信助、葵は安心したようにホッと安堵の息を吐いた。久遠の方を見れば、相変わらずの無表情顔。その表情に再び天馬達の顔に緊張が走った。あれは、怒っているのだろうか…悠那はこのテストを受けられるだろうか…徐々に嫌な汗が出てきた。

「遅かったな」
『すみません、着替える場所を探してました…』

恥ずかしながらも、遅れた理由を言ってみたは良いが、果たしてこれでテストを受けれるかが問題だった。ふと視線を見上げてみれば、久遠は無表情で自分を見下げていた。思わず先輩達の顔にも一部を除いてだが、緊張が走っていた。だが、返ってきた言葉は思ったよりあっさりとしていた。

「そうか、じゃあ早く並べ」
『は、はい!!』

あまりにあっさりとしていたものだから、悠那は唖然としながらも並んでいる一年生達の隣へと並んだ。何はともあれテストを受けれるようになったので、悠那は安堵の息を吐いたのだった。

「…これより入部テストを行う。松風天馬」
「はい!」
「西園信助」
「はい!」

天馬と信助の後にやる気の無さそうな目をした古手川、体が大きく糸目な押井、背が高く色黒な金成の順に久遠が名前を呼んで行く。そして、

「谷宮悠那」
『はい!』

悠那もちゃんと名前を呼ばれ、悠那もまた天馬と信助と同じように返事をした。そして、久遠の視線は一年全員に向けられた。

「キミ達には実践形式でプレイをしてもらう。それを元に合格、不合格を決める」
『「「「はい!!」」」』

返事をした瞬間、天馬達一年がフィールドへ入ると同時に先輩達も入ってきた。この人達と実践形式をやるのかあ…と今更緊張が走ってきた。

「6人には、二年と三年を相手に攻め込んで貰う。方法は自由だ」
「頑張って、皆で合格しよう!」
『「おー!!」』

天馬の意気込みに悠那と信助は声を合わせて作った拳を上げた。それを見た神童は辛そうにも、それを嫌そうに見ていた。だが、それはサッカー部員である二年と三年も同じ事。まだ三年生は二年よりも年上なので、まだ辛そうに顔を歪めていたが、二年である倉間はウザったそうにチッと舌打ちをしていた。
テストは古手川と押井からのキックオフで始まった。押井が古手川にパスを出し、古手川は金成にパスを出し、金成はそのままドリブルで上がって行く。金成達三人の心中何を思っている事は勿論天馬達は知る筈もなく、自分達も上がって行く事に。
少し上がった後に倉間が金成の方へ立ち塞がり、ボールを取ろうとするが、金成は上がるのを止めて古手川にパスを出した。そこまでは良かったんだ。

「うわっ!どこ蹴ってんだよ!」
「お前のトラップが下手なんだよ!」

取れた筈(普通だったら)のボールを古手川はギリギリで受け止めた。そして金成への文句。金成は古手川が下手だからという理由で終わらせ、古手川はケッと顔を歪ませながらもドリブルで上がって行った。そして、押井へとパスをしたが取り損ねてしまう。
押井はボールのパスが強いと言い、古手川に訴えるが、古手川はポケットに手を突っ込み、聞こえないフリをしていた。

『(息が合ってない…ていうか、この人達性格悪いなあ…;)』

パスの仕方とパスの受け方。走るスピードも少し遅い気がしてならない。そもそも、彼等はやる気があるのだろうか。
彼等の後を追っても良いのだろうか…悠那は半ば呆れながらその彼等のやり取りを見ていた。

「何してんのユナ?行こうよ!」
『え?ああ、うん…』

ここで黙って彼等の様子を観察していても仕方ない。悠那は少し考えてからうん、と頷き天馬と信助と共に上がって行った。トラップをし損ねたボールは車田の元へと転がって行き、足でボールを抑えた。車田は表情こそ表には出さなかったが、残念そうにも呆れた顔をした。それは他の先輩達も同じだったようで、呆れたような顔をしていた。

『…先輩、こっちにお願いしますっ』

古手川達にボールを渡していたら自分達にボールが渡らない。そしたら今までやってきた練習が水の泡となってしまう。
それだけは何としても阻止しなければ、悠那は渋々片手を上げて車田にボールを渡してくれと訴えた。それを見た車田は呆れた顔をしながら5人より後ろに居た悠那にボールを渡した。それを胸で受け止めた悠那はボールを地面に置き、片足で抑えた。
自分だってイタリアに行ってただ帰って来た訳じゃない。ちゃんと守兄さん達と並びたくて師匠に鍛えて貰った身だ。ここで出さないと無駄になる。

『行きます!』



prevnext


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -