一方、その光景を見ていたサッカー部員達がそれぞれの教室の窓から見ていた。特にその練習を応援する事もなく、自分達はただ視界に入ったから見ている程度だった。

「昨日のアイツ等だド」
「気合い入ってるじゃねえか!」

いつぞやの自分達を見ている気がしてならない三年生。その目はまるで小さな子供を温かい目で見守る兄的な視点で見ていた。

「松風天馬に谷宮悠那だっけ?」
「アイツ等、うっぜ」
「こんな状況なのに…入部したってね」

ゴーグルを頭に掛けている浜野もまた三年生みたく温かく見守っており、その隣に居る倉間はつまらない物を見るように不機嫌そうに二年生らしい反応をしていた。そして速水は若干呆れるように呟きながら天馬達を見ていた。あんなにはしゃいでいる一年生を見ると、徐々に現実を思い知る事になる。自分達も少し前まではサッカーに対してあんなはしゃいでいた気がする。だけど、今は違った。結局、三年生も二年生も昼休みが終わるまでその一年生を見ていた。

場所は変わり、部室では神童が一人椅子に座ってあのキャプテンの証である物を持ってただそれを眺めていた。

「……」

俺に、何が出来る。俺に出来る事は…何も無いのか?
自分の脳裏に再び再生される昨日の事件。一日経ったというのにも関わらず、昨日の事がさっきまであったように振り返られた。傷付いていく部員達。助っ人に入ってくれた天馬や悠那もボロボロにさせてしまい、自分もまたボロボロにされた。おまけにセカンドチームは全滅ときた。ファーストも水森と小坂が抜けてしまい、9人になってしまった。しかもそこに剣城が加わってしまった。傷なんてもうとっくに癒えて良い頃なのに、ボールによって付けられた傷が振り返る度に疼く気がして吐き気まで襲い掛かる。

霧野は自分が化身を出したと言ってくれたが、何故もっと早く現れてくれなかったと後悔ばかりだ。これは、サッカーが自分達の今までの行動に天罰を与えているのか…?まさか、そんな事は無い。だって、自分達はフィフスセクターの言う通りに今まで従ってきたから、大丈夫だ。

「授業始まるぞ、神童」

頭がパンクしそうなくらい、悩んでいれば自分にキャプテンを任した張本人である三国。声色こそ明るそうだが、やはりどこか暗かった。顔を上げれば尚更それが分かる。

「三国さん…俺の所為です…!キャプテンの俺がサッカー部を守れなきゃいけないのに…!!」

結果的には昨日の試合は自分が化身を出した事で守れた。だけど、あんな守り方は遅過ぎてならない。自分にとって守った事にはならないのだ。自分が倒れた後に、霧野に皆を集めて貰ったけど、皆の表情は壊そうにしていたり、剣城によって付けられた傷が痛んでいたのか、そこを抑えている者もいた。マネージャーなんて辞めても当たり前だったのだ。全ての事に罪悪感がありすぎて神童は立ち上がり三国に向かって頭を下げた。だが、それを三国は無理矢理上げさせた。

「お前の所為じゃない。アイツ等はサッカー部を潰しに来た。試合を受けるしかなかったんだ」
「でも…っ」

俺は三国さん達、先輩と約束をしたのに…
思い出されるのは随分最近の事だった。場所はここではないミーティングルーム。そこへ自分と霧野は二年生の三国、車田、天城に呼ばれてきた。その時、南沢も居たが彼はきっとついでに来たに違いない。三人が真剣な顔をしているにも関わらず彼一人だけはどうでも良さそうにしていたのだから。

話しの内容は三国がキャプテンを降りて、自分に託すというとの事。
最初は自分にも抵抗があった。いきなり一年がキャプテンをやれと言われて直ぐに返事が出来なかったのだ。だが、三国曰わく自分にはオーケストラの指揮者がタクトを振るように、チームを纏める才能がある、と。自分がその力を発揮すれば雷門は強くなる。そう言われた。自分でなければダメだと。
自分もそこで、キャプテンマークを三国から受け継いだのだ。なのに、今ではどうだ?

「俺には、無理だったんです…」

キャプテンとして何も出来ていない。そんな事、自分でも分かっていた筈なのに、このキャプテンマークを受け継がせて貰ったのだ。これが自業自得というものだろうか、悔しさでキャプテンマークを握り締めた。

「それでも、俺はお前を信じている」

その言葉でまた神童の中にあった責任感が強くなった気がした。

…………
………


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