《それでは、この雷門魂についてキャプテンの松風天馬にお話しを伺ってみましょう。天馬君、まずは優勝おめでとうございます》
《ッ!?あ、あ、ありがとうございます!》

『「「「おおっ」」」』
「うわぁ〜緊張してる〜!」
「仕方ないよ、こんなの初めてなんだからさ」

緊張のし過ぎで、アナウンサーの祝いの言葉にも、膝に置いていた手を真っ直ぐにしてしまい、視線もアナウンサーの方ではなくまるで天上に向けてお礼を言っていた。そんな天馬をテレビで見た信助が可笑しそうに笑い、天馬は自分にフォローを入れてしまう。

《天馬君から見て雷門、優勝の秘密はどんな所にあると思いますか?》
《え?…あっ…や、やっぱり、チームワークだと思います。どんなプレーも、メンバーの息が合ってないと出来ない物ばかりでしたっ》
《なるほど》
《あっ…でも、初めは本当にバラバラで最初はどうなっちゃうのかなって…で、でも、皆本当サッカー大好きだから何とかなるって俺、思ってて…》

「お前ちょっと、緊張し過ぎだろ。上がり過ぎて何言ってるかよく分かんないぞ〜」
『言いたい事は分かるけどね…』
「そ、そうだね」

天馬の後ろでインタビューを見ていた狩屋が茶々を入れるように今目の前にいる天馬にそう言う。横にいた悠那もついフォローを入れるが、これは少しだけ見ててこちらも恥ずかしい気分になってしまう。
二人の言葉に、天馬は顔を赤くしながらもぎこちなく笑った。

《では、天馬君。ファンに向けて一言お願いします》
《はいっ……えーっと、…これからも雷門を応援して下さい。来年も日本一目指して頑張ります!》

「コメント、優等生過ぎ」
「しょうがないだろ!本当に緊張してたんだから!」

狩屋の指摘に天馬は先程よりももっと顔を赤くしていきつい叫んでしまう。だけどそんな彼にも動ぜず、狩屋は口元に手を当てながら静かに下がった。

《それでは次回は雷門魂の更なる原点。円堂監督がまだサッカー部員だった時代にスポットを当てて強さの秘密にもっと、もっと、深〜く迫ってみたいと思います。また次回、この時間にお会いしましょう!》

「あれ?これで終わり?」
「あぁ…終わり…だね」

アナウンサーが天馬のインタビューを終えると、こちらに向けて手を振って見せる。そこでそのニュース番組は次のニュースに移る為に一旦CMを挟む。
そんな呆気ない終わりに、一同は茫然とその液晶画面を見つめた。

「えーっ!僕のインタビュー使われてない!」
「てかそもそも俺、インタビュー受けてねぇし!」
「狩屋君、どっか行っちゃうんだもん」
『人見知り発動させちゃった?』
「う!る!さ!い!」
『なんへわひゃしふぁっかり!!(何で私ばっかり!!)』

インタビューを受けたのに使われていない信助に、インタビューすら受けてない狩屋。そんな彼に苦笑の笑みを浮かばせて葵が説明をし、更に悠那がそう何気なく尋ねてみれば図星だったのか直ぐに落としていた肩を戻しキッと悠那を睨み付けては彼女の頬を引っ張り出した。
そんなやり取りを見て、一同が笑いの渦に包まれた時、天馬は再び液晶を見つめた。

――優勝出来たのは本当に沢山の人達の応援があったからだ。……サッカー、ありがとう。こんなにも沢山の出会いをくれて…

天馬がそんな事を思った瞬間、CMに入っていた番組が再び映されて、次のニュースに移っていた。
そして、そのニュースはその場に居た誰もが驚くニュースであった。

《――次のニュースです。二週間前、雷門病院に搬送された。ホーリーロード決勝戦に出場していた聖堂山の選手、上村裕弥さんが先程目を覚まされたそうです。》

「「「!?」」」
「こ、このニュース…!」
「上村裕弥って…!」

《なお、上村さんの容体を確認する為、病院の方では早急の手立てをするそうです。》
《聞く所によると上村さんはかなり重い病状と聞きましたが…》
《まだフィフスがあった頃に強い薬を何個か飲んでいたのでしょうねぇ…サッカーが出来るとはいえ、彼の体にはかなり負担があったのではないのでしょうか》
《これから選手として活躍できるのかは未だ不明な所ですが、命に別状が無くて良かったですね》

液晶の中で繰り広げられるアナウンサー同士の会話。そして、彼等の背後にあった液晶では、サッカー選手として活躍していたであろう上村裕弥のプレーシーンが見られた。
気付けば、狩屋は悠那の頬から手を離し、悠那もまた信じられないと言わんばかりに目を見開かせ、立ち上がっては、目の前に映るテレビに向けて手を伸ばしては近付いて行こうとする。

「――悠那!!」
『――ッ!』

ふと、名前を呼ばれて気付く。
これは、液晶だ。映像だ。本物じゃない。そう自覚して悲しくなったが、それでも変えられない事実がある。
それは、上村裕弥がさっき、目を覚ましたという事――
悠那は、ゆっくりと後ろを振り返った。

そこには、雷門全員の顔があり、一人ひとりがこちらを見ては小さく微笑んでいた。

「行ってこい。今度こそお前のお兄さんの所に行ってくるんだ」
『拓人、先輩…っ』
「迎えなら出す。俺達は後から行くから、急いで雷門病院に行くぞ!」
『…ッ、はい!』

現実だ。これは、夢なんかじゃない。
だって、さっきまでマサキに引っ張られてた頬がまだ、痛みを主張しているんだから。
神童のその言葉に悠那は力強く頷くと、直ぐに神童は携帯を取り出し自分の執事であろう人物に電話をかけて、周りの皆も良かったなと、悠那の背中を押して行った。

『行ってきます!!』
「「「行ってらっしゃい!!」」」

全員のそんな言葉を聞き、悠那は駆け足に部室を飛び出して行った――…

「行ったな…」
「うん、何か…寂しいね」

残された雷門イレブン。剣城は何も言わなかったが、彼女にはちゃんと言うべき事はもう決勝戦後に伝えてある。後は、この再会が吉と出るか、凶と出るかによる。
去って行った彼女の後ろ姿に、剣城がぽつりと呟けば、傍に来た天馬が寂しそうな顔をしてそう呟いた。

「大丈夫よ天馬に剣城君。あの子は確かに成長したけど、決して皆の傍を離れたりなんかしないから」

秋のその言葉に、二人ももちろん、雷門イレブン全員が安心したような、そんな顔を浮かばせていた。



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