《雷門イレブン強さの秘密その2 “選手を支える女神達!”》

「――…だが、本気で勝利を求めない奴に勝利の女神は決して微笑まない」

ピッという音で、流れてきた円堂の名言でもあるであろうその言葉で流れてきた映像は止まる。
それは、天河原中との試合の時、間の休憩時間で選手達に言った言葉だった。
そして、アナウンサーは続けて話題に振った。

「はい。円堂監督もこのように言っております。勝利の女神。
私達取材班は雷門イレブンを支える女神達に強さの秘密を見つけました」

画面が再び切り替わり、次にはこの雷門イレブンのマネージャーである葵、水鳥、茜が映り変わった。
刹那、隣に座っていた天馬の姿が明らかに緊張している水鳥により消えた。

「出た!!」
「なんか、緊張する…!」
「うん、うん」
「どんな紹介されるのかな?」
「……おっもーい!!」
「あ、わりぃわりぃ」

自分達が映った事によりやや緊張が走る三人のマネージャー。選手を陰ながらに支え、観客やファンよりも近くで、長く応援してきた三人。スポットに当てられるのは早々無い故にどう紹介されるのか気になる所だった。
そこで、水鳥に押しつぶされていた天馬が痺れを切らし思い切り起き上がる。そんな彼の姿にプッと噴き出してしまう悠那だった。

「二年の瀬戸水鳥さんと山菜茜さん。そして一年の空野葵さん。…天馬君達の練習を支え、声援を送り続けた三人は優勝の影の主役と言えるでしょう!」

サッカー好きの天馬と悠那、そして信助を間近で応援をし続けた葵。水鳥の男前な性格でチームに張りが出来、神童を追い駆けてはサッカー部のマネージャーになって神童の姿と、そして雷門イレブンのメンバーの努力している姿をその愛用のカメラで撮っていた茜。
その三人が居てからこそ、このサッカー部はより一層華が増したであろう。

「そして、次は雷門イレブンの唯一の女の子の選手の谷宮悠那さん!松風天馬君と似ている性格をしているという事でお二人は一部の間では“合わせ鏡”とも呼ばれていたそうです。そして、あの円堂監督達、OBの方達の古き後輩でもあり師匠であり、10年前の女性選手でもある由良さんの従妹でもあり、傍でサッカーを見てきたらしく実力もそこそこ!イタリアには師匠もいるみたいですっ。
雷門イレブンの可憐な華ですねっ」

「可憐な華、ねぇ…」
「何て言うか…」
「合ってないような…」
『春奈せんせー先輩達とマサキ君が私を苛めまーすこれは差別でーす』

倉間、霧野、狩屋が首を捻りながら今のアナウンサーの紹介に納得が出来ていないのか、口々に呟く。しかしそれが聞こえていたのか悠那は後ろを振り返り春奈に向けて訴えてきた。
そんな彼女に誰もが苦笑の笑みを浮かばせ、画面は再び次へと進んだ。

「顧問の音無春奈先生。10年前、マネージャーをされていた彼女は悠那さんと一緒に雷門の初優勝やイナズマジャパンの優勝など、雷門の歴史を語る上で欠かせない、謂わば歴史を語る証言者なのです!」

更に春奈の紹介もされ、雷門のメンバーは悠那の事ももちろん、春奈の実話に目を見開かせていく。自分の身近な人間が10年前の雷門と関わりを持っていた事に驚かざるを得なかった。

「さらに、円堂監督の奥様、円堂夏未さん。素晴らしいお料理の数々で円堂監督の采配を支えてくれました!」

『素晴らしいお料理…』
「表現は、間違ってない…よね」
「どうしたの二人共?顔色悪いよ?」
『「何でもない…」』
「??」

素晴らしいお料理という言葉に、悠那と天馬は思わずあの料理の数々を思い出しては顔色を青くしていく。思い出しただけであの独特的な味が口の中に広がっていく。ある意味思い出の味であった。
だが、そんな料理の味を知らない信助はただ二人の隣で疑問符を浮かばせるだけだった。

「そして、忘れちゃいけない。天馬君と悠那さんが暮らす木枯らし荘の管理人、木野秋さん。時に二人の親代わりとして、時にはサッカーの相談相手としていつも見守ってくれていました」

「…こうやってまた、音無さんと一緒に雷門の優勝を喜べるなんて…嘘みたい」
「私はずっと、それを夢見てましたよ」

そんな会話が後ろから聞えてくる。ちらりと振り返って見ると、二人は昔みたいに笑い合っており、不意に10年前の彼女達を思い出してしまった。
そして、それを見ていたのか、信助の隣にいた葵が羨ましそうな笑みを浮かばせた。

「私も音無先生たちみたいになれるかな?」
「案外あたしらも10年後、またこうやって、雷門イレブンを応援してるかもしれないぜ?」
「それってちょっと、素敵かも」

そう言って笑い合う三人。秋も、春奈も、夏未も、冬花も、一緒には居ないが違う所で意外な所で、雷門を応援し続けて、何かの縁でまた再会していく。そして、この三人もそうなのであろう。
そんな会話があった頃、それを聞いていた信助が口を挟んだ。

「その時はもしかしたら僕が監督やってたりして!」
「「ないない」」
「大体お前、円堂監督みたいにビシッと出来んのか?」

信助が監督に…それは流石に想像が出来なかったのか、三人は手を左右に振ってありえないと言わんばかりに否定した。そして水鳥が円堂を例えに出して信助にそう尋ねてみれば、信助は自信がよほどあったのだろう、胸を張って言って見せた。

「出来るよー!「天馬!お前がキーパーだ!」」
「似てない〜」
『守兄さんはもっとこう、もっと先を見据えたような言い草ででね…』
「はいはい、悠那その話しはまた今度聞くなー」

円堂の真似をする信助に葵が似てないと主張しつつ笑い合う。そんな中、悠那は空気を読まず真剣な表情で円堂の特徴を言っていき、改めて真似をさせようとする。だが、その話しは絶対に長くなると分かっていた水鳥は途中でやめさせて彼女の顔をテレビの方へと向き直した。



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