「「“ファイアトルネード”!!」」
『「“ダブルタイフーン”!!」』

目の前に広がる二つの紅蓮の炎と、二つの台風。それらが相手のゴールを割り、点数が決まった事により雷門の全員が喜んでは、キャプテンである一人の風の少年に駆け寄って行った。
そして、その画面を流したままとあるアナウンサーの声が喋り始めた。

《今回のホーリーロードで優勝を飾ったのは…
そう!皆さんご存知の雷門中でした!》

ホーリーロードの優勝を証としたトロフィーが大空に掲げる天馬。その場面を一時停止し、次に移されたのは、最近人気になってきた女性アナウンサーが、紙を持ちながらカメラに向けて挨拶をする。
その画面を悠那は仲間達と部室で見つめていた。

《こんにちは!アナウンサーの富永純です。
今日は雷門中学校、ホーリーロード優勝記念特別企画!雷門イレブン、その強さの秘密に対して――》

始まった雷門イレブンの特集。それを見る為だけに、休日にも関わらず雷門中のサッカー部に来て、更に秋と春奈まで集まって、その大きな液晶を間近で視聴していた。
始まった特集に天馬はワクワクとした表情でいた。

「ホントに俺達映ってる!」
「ドキドキするね!」
『私木枯らしでも録画してきちゃったよ!』

だが、ワクワクしていたのは天馬だけでなく、信助も悠那も緊張気味に天馬に返した。
その時、後ろにある部室の扉がウィーンと開きだし、狩屋と輝が慌てたようにこちらに入ってきたのが見えた。

「あぁっちゃ!もう始まっっちゃってるよ!」
「もう皆出た?」
「これからだよっ大丈夫、ちゃんと録画してるから」
「あっぶねー…」

天馬の言葉に、狩屋は安堵の息を吐いては、天馬達の後ろに座り、テレビを少し遅れながらも一緒に視聴する。
その二人が座ったのを見届けると、タイミングよく特集が始まり、全員の視線はテレビに再び集まる。

《私達取材班は雷門イレブンの強さの秘密を三つにまで絞り込みました!それではどんな秘密が彼等を優勝に導いたのでしょうか!さっそく見ていきましょう!》

そこで、アナウンサーは自分の背後にあるスクリーンに目を向けて、カメラもまたそのカメラに焦点を合わせて再び雷門のメンバーが映される。
そして、画面がアップされた時、アナウンサーはそこへアナウンスを付けていく。

《雷門イレブン強さの秘密その1 “河川敷は努力の聖地”!!》

そこで映されたのは、神童がまだキャプテンの時だったの場面。ウェーブのかかった髪が風に靡き、ボールが弧を描く。そして、次に映ってきたのが、三国が飛んできたボールをキャッチする迫力のある姿。剣城が相手からボールをキープして神童にパスをする。
そして、神童が速水にパスを出し、浜野がボールを貰い、狩屋がボールに食らい付いていき、輝がシュートを決める。

その場面は今まで試合をしてきた中学校の場面だった。
天河原、万能坂、海王、木戸川、月山国光、白恋。
それぞれの選手のそれぞれの名シーンが描かれていた。

《風とまで呼ばれた雷門中の快進撃は全国のサッカー少年の魂を熱く、熱く、熱−く揺さぶりました!名勝負の数々を覚えている皆さんも多いのではないのでしょうか?
私も雷門サッカー部の大ファンになってしまいました!特に神童君!彼かっこいいですよね!激しさの中に神秘的な魅力が堪りません!》
「うん、あの人分かってるっ」
『うむ、確かに』
「悠那…!?」

ベタ褒めするアナウンサーに茜が嬉しそうに頷いてみせる。それに便乗して剣城の隣で彼と同じように腕を組みながら頷いて見せれば、反応した神童が僅かに頬を赤らめ、隣に居た剣城と天馬には密かに眉を吊り上げられてしまう。
だが、それには気付かないまま、テレビの画面は次に映った。

《はい!という訳で私は今、サッカー少年達が集まる河川敷に来ています!》

『あ、真一兄さんとまこちゃん!』

次に映された場面は、河川敷であり、そこには何人かの稲妻KFCの少年少女達がカメラに向けて手を振ったりピースをしたりと自分を主張する。そして、そんな子ども達を微笑ましそうに見守るかつての雷門中サッカー部だった半田と、稲妻KFCだったまこがそこには居た。
年の近かったまこに対して悠那もまた懐いており、まこにだけは姉ではなく友達感覚として引っ付いていた。

「ちょっと、インタビューしてみましょう。皆ー!雷門イレブンは好きですかー?」
「「「「「好き!」」」」」

自分の持っていたマイクを大きく翳し、子ども達は主張を止めて大きく声を揃えてそう言ってみせた。そんな子ども達に半田は困ったように笑い、まこも微笑ましそうに笑みを浮かばせる。
そして、アナウンサーの富永は一人ひとりにインタビューをしていった。

「それじゃあ、雷門イレブンの誰が好き?」
「天馬!化身超かっこいい!」「剣城君!」「天城さんだド!」「神童!かっこいいよね!」「やっぱり霧野君!」「男なら三国さんだ!」「信助君、可愛いよねぇ〜!」「僕は悠那ちゃん!いつか一緒に試合したい!」

「ちゅーか、可愛いってよ信助」
「あっ、はぁ…」
『私もあの子達と試合やってみたいですっ』

ケーキを食べて子ども達のインタビューを聞く信助に浜野がからかいの言葉を言う。その言葉に信助は照れたように笑みを浮かばせ、悠那も自分の名前を出してくれた事に喜んでいたのか、いつか試合をやりたいと思い始めた。
子ども達の中で一年生の名前が多く出て、水鳥は後ろから天馬と悠那の肩を強く抱いてくる。

「いーじゃんいーじゃん!皆、ファンが出来てさ!」
「…何か照れるね」
『「うん」』
「……俺、…呼んでもらえなかった」
『「「「…あぁ、」」」』

こそばゆくも、少しずつそのファンが自分の自信に繋がる。照れるように顔を見合わせる中、後ろではズーンっと明らかに負のオーラを放出させる狩屋に、何の言葉を掛ける事も出来ずに四人は苦笑いを浮かべるしかなかった。
そうしている間にも、画面は次に映っていた。

「実はこの河川敷、雷門イレブンにとっても大切な場所なんです。…と言うのも、ここでの特訓で数々の必殺技が生み出されたからです。
ホーリーロード終盤では、一年生ながらにキャプテンとして活躍した松風天馬君。彼はいつもここで“合わせ鏡”と呼ばれた谷宮悠那さんと練習していたそうです。初めての必殺技、そよ風ステップはここで生まれたんです」

と、ここで再現VTRであろう天馬の映像が流れ始め、名前を出された天馬と悠那は顔を見合わせるなり小さく微笑む。
それは天馬が初めて神童をドリブルで抜いた、そよ風ステップを生み出した場面。諦めず挑み続けた結果が、あの成果である。生み出した本人も相当喜んだであろう。

「そして同じく一年生の西園信助くんもここで初の必殺技、ぶっ飛びジャンプを編みだし、谷宮悠那さんもここで必殺技の練習をし、帝国戦で結果を残しました!
決戦で反撃のきっかけとなったファイアトルネードDD(ダブルドライブ)もこの河川敷での練習が実を結んだ物なんです!」

『二人でこんな特訓してたなんて思わなかったけどね』
「ホントホント!僕なんてあの時一瞬豪炎寺さんがまた中学生に戻ったのかと思ったよ!」
「へへへ…っ」

決勝戦の時の天馬と剣城が完成させたファイアトルネードDDを打って得点をゲットした映像が流れる。それが流れた時、悠那と信助は関心したように言う。
二人共、きっかけは違えど、憧れていた人物、追っていた人物は同一人物だったからこそ、あの技が完成出来たと言っても過言ではない。
天馬は照れたように笑い、剣城もフッと笑みを浮かばせた。

「円堂監督が着任早々、チームの気持ちを一つにまとめ上げたのも、この場所だそうです。…様々なドラマが生まれた場所でもあるんですね」

ふと思い出される、バラバラだった雷門のチームの状況。そして、それを円堂が監督に付いた事により、チームの一人ひとりが、サッカーと向き合おうとこの場所に集まってきていた。
大切な場所、というのも足りない位、この河川敷には思入れがあった。

「この河川敷は天馬君や悠那さんを初め、雷門イレブンの沢山の想いが詰まってるんです。

……河川敷、ありがとう!これからも雷門イレブンの努力を見守って下さいねー!」

アナウンサーが、河川敷に向かってまるで雷門のファンのように叫ぶ。その姿に、一同はまた照れ臭そうに笑い合った。



prevnext


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -