聖帝選挙の発表が行われた。
あの後、上村裕弥は吐血をし直ぐに病院へと運ばれ、会場は混乱に追い込まれたが、この会場の責任者である千宮路が何とか挽回し、閉会式まで持って行く事が出来た、らしい。
先程までの事が無かったかのようにスタジアムが地上に付いた時、アナウンサーの声と共に、電子音が響木と豪炎寺の映像が映し出された。響木の票が一番上まで上がっていく。

《サッカー界総責任者、新しい聖帝は響木正剛氏となりました!》
《それでは新聖帝響木正剛氏による就任演説です》

わああっと歓声が上がる。
角間の演説の後に、アナウンサーの声が次に演説される。そして、響木が大きく映し出された時、演説が開始された。

《…サッカーは平等なモノではありません》
「!」
《サッカーは強くなりたいと願い、多くの汗と涙を流した物が勝利を勝ち取る。力を出し切る事が出来なかった者は敗北し、悔しさで涙する。
そこにあるのは平等などではない。驚く程シビアで、辛い現実である》

しかし、若者たちが思いと思いをぶつけ合って心の底から熱くなれる、それこそ長く人生を往かねばならない全ての若者たちの勇気になるでしょう。

《ここに、フィフスセクターの解散を宣言する!!
全てのサッカーを愛する者よ!サッカーを自由にプレーしてほしい!!》

これでやっと、雷門の本当のサッカーを賭けた革命は幕を閉じる。
沢山のライトを浴びる中、雷門の選手達は四方八方に居る観客席にいる人達に手を振っていく。その表情は嬉しそうだった。自分達は誇っていいのだ、と認められている気分だった。
だけど、一人だけその空気の中に浮かべない人物がいた。それは先程の事があってだろう。彼女だけは、下を向いていた。

「…お前は、自分のやるべき事をやったんだ」
『京、介…でも、私…助けられてなかった…っ』
「助けられてたよ、上村さんも、逸仁さんも、俺だって救われた。お前のやる本当のサッカーで。そして、今はその今までやってきたサッカーが認められたんだ。誇れよ」
『京介…』
「お前の信じるサッカーで、上村さんはもう、管理サッカーから解放されたんだ。そうだろ?」
『…うん、』

無理矢理のこじ付けかもしれない。だけど、真実でもある。その胸の上で揺れる折り鶴が何よりの証拠だ。
剣城はうんと、頷く彼女を見ると小さく微笑み彼女の手を持ち上げる。そして、左右に振って見せた。それはまるで、母親のような感覚がして悠那にとっては可笑しかったのか、っぷ、と小さく笑うと、自分の腕を今度は自分で振った。

「俺、少しだけ分かった気がする」
『「?」』

ふと、隣に立っていた天馬が上を見上げながらそう呟いた。その言葉に気付いた剣城と悠那は天馬の方を向くなり彼の次の言葉を待つ。

「化身って、必殺技って、何かって。
化身も必殺技も、サッカーが好きだって気持ちがギュッって固まった物なんだ。俺達が勝てたのは、その気持ちが勝ってたからじゃないかな」
「かもな、」
『うん、そうかもね』

サッカーへ対する気持ちが、聖堂山の選手達より勝っていたからこそ、彼等の出す化身にはもう屈しなかった。怯まなかった。怖くなかった。
二人の同意に天馬は嬉しそうに微笑むと、彼の髪を揺らす風が吹く。そして、天馬は頭上を見上げた。

「サッカー、見ててくれたかな。俺達の事」

風が、天馬の部屋にある古いサッカーボールを押し、転がした。
それはきっと、天馬達の知らない所で、サッカーが応えていたのかもしれない。


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