「ドラゴンリンクの正体が分かっただって?」
「ああ、何とか探りだした」

帝国学園の奥深くにあるレジスタンスの本部。薄暗い中、その部屋の中で目立つのはコンピュータの光。その明るい画面の傍に居た人物に吉良ヒロトが若干を声を荒げて近付いていく。ずっとそのコンピュータと向き合っていたせいか目を擦るその人物、緑川リュウジは声色で疲れたと言わんばかりにヒロトに調べ終わったと告げた。
そして、目を休める間を開けずに彼にその画面を見せた。

「で、何だったんだ?」
「…信じられない、ドラゴンリンクとは――…」

リュウジが探り当てたそのドラゴンリンクの隠されていた裏の事実。それを雷門が知る事になるのは、あと少し。

ピィ―――ッ!!

試合会場。そこでは既に雷門の反撃が始まっていた。天馬がドリブルで斬り込んでいき、その後ろにはFWを始め、MFも上がり始めている。それを天馬は目で確認。点を取られても冷静に次の行動に移れている皆を見て、天馬は安心したように笑みを浮かばせた。

「ここは通さない」
「(よし、そよかぜステップで――!)」

天馬が上がっていく中、天瀬が天馬のドリブルを止めようと上がってきた。それを見て天馬はお得意のドリブル技で抜こうとスピードを上げていく。だが、先手は天瀬の方が早かったのか、彼は両手で気を込め、サッカーボールと同じぐらいの球体を作るとそれを天馬に向かって蹴り上げた。

「“エアーバレット”!!」
「うわあ!!」

球体を食らった天馬は、反動で吹き飛ばされてしまう。もちろんボールも手放してしまった故、ボールは天瀬に渡ってしまった。ボールを胸で受け止めた天瀬はそのまま一気に雷門の方へ上がってくる。OF、DF共に、死角なしと言った所だろう。天瀬は少し進んだ所で、黒裂へとボールを蹴り上げた。ボールを受け取った黒裂に突っ込むのは止めようと浜野が向かっていった。

「俺に任せなってー!」
「堤美!」

だが、黒裂は浜野にマークが付かれる前に、堤美へとパスを出し何とか逃れる。マークには入れなかったが、攻め込んでくる堤美を止めようと今度は霧野が上がってきた。

「“ザ・ミスト”!!」

持前の必殺技で霧を出し、周りが見えなくなった所で相手の動きを封じる。霧の濃さを利用し、霧野は相手の背後から音もなく近寄っていき、ボールを奪った。そのまま上がっていき、錦へとパス渡す。そのボールを胸で受け止めた錦もまた「ナイスぜよ」と声を上げた後、直ぐに駆け上がっていく。ボールは再び雷門へと渡ったのだ。ここからまた雷門の反撃。天瀬のスライディングを交わした錦は、剣城と倉間と目を合わせ三人して頷き合った。

「倉間あ!」
「剣城!」

まだフリーの倉間にボールを蹴り上げる。だが、その倉間にマークしてボールを奪おうとする聖堂山の選手が二人。このままでは相手にボールが渡ってしまうかもしれない。だが、そんなミスを倉間が易々とする訳ではない。相手に渡ってしまう前に、倉間は少し跳び上がりつつ剣城へとボールを飛ばした。
ボールは剣城に渡った。そのまま聖堂山のゴールへと攻め上がっていく剣城の前に、聖堂山のDFが剣城に向かってくる。だが、これは作戦。残りのDFを引き受けた剣城は、口角を上げるとギリギリのタイミングで横へとボールを蹴った。ボールが蹴られた先を追ってみれば、そこには先程倉間にパスを出した錦の姿が。相手が気付いても既に遅し。錦は左足を思い切り地面に踏み込むと、背後から自分の化身を出現させた。

「はぁぁああああ!!“戦国武神ムサシ”!!

“武神連斬”!!」

紅葉を周りに舞い散らせ、ボールを斬るかのように蹴り上げる。最後に一蹴りすると、そのボールは真っ直ぐにゴールへと向かっていく。だが、先程とは違い、相手のゴールキーパーは今度こそ必殺技を出す余裕が出来ていた。両腕を思い切り振り上げると、錦の蹴った必殺技に向かって連続で蹴りを浴びせる。ボールに宿ったパワーを破壊しようとするその技は、

「“シュートブレイク”!!」

目にも見えない蹴りの嵐。天馬は初めて見るその必殺技を見て、止められてしまうんじゃないかと不安を顔に表す。最後の一蹴りが決められた。が、一度失いかけていたボールの勢いが一気に戻ってきて、征木は吹き飛ばされてしまい、ボールはワンバウンドするとそのままゴールへと入って行った。

ピィ―――ッ!!

「入ったああああ!!」

今度は雷門が化身シュートで点数をもぎ取ってみせた。まさに一進一退。一瞬も目が離せない試合となっていた。それはつまり、雷門は聖堂山と同等の戦力という事で受け取っておくべきか。黒裂の驚いている表情を見る限り、少なくとも雷門にはまだチャンスがある。ベンチでも同点に追いついた事によりまた盛り上がっている。
これは、両チーム共々、力の限り戦っているのだ。

ピ、ピィ―――ッ!!!

と、ここで前半戦終了のホイッスルが鳴り響いた。スコアは2-2。雷門も聖堂山も同点で試合を折り返した。前半が終わった所で、選手達は休憩に入る。そのためフィールドから天馬は出ようと歩き始めると後ろから黒裂が近付いてきた。

「キミ達も中々やるようだな。だが、我が聖堂山に敗北の二文字はない」
「雷門だって、ここまで必死に戦ってきたんです。絶対負けませんっ」
「…後半戦も、全力で戦う。キミ達も、全力を出し切る事だ」

真剣な表情をしながらも、彼からの言葉一つ一つはまるでフィフスの選手のような言葉ではなく、普通の、天馬達のような選手みたいな言葉を発している。もちろん、彼は彼なりにフィフスに誇りを持っており、誓いも雷門と同じくらい強いだろう。先にベンチの方に戻っていった黒裂の後ろ姿を見て、天馬もまた真剣な表情に戻した。

「(聖堂山も誇りをかけて戦っている。俺達も、雷門に恥じない試合をしなきゃ…)」

悔いのない試合に、そして革命を成功させるために。天馬の闘志に、静かな炎が灯された。

「――イシドシュウジ。それがお前が私への答えか…」

……………
………



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