『…仲間思いなんですね、キャプテンって』

自分も知っている。ここ雷門に居た10年前の事や、イタリアに居る自分の師匠とも呼べるキャプテンと二人目のキャプテンの存在を。いや、それだけじゃない。他の学校のチームや他の国でキャプテンを勤めている人達は皆仲間思いで仲間から信頼されていた。きっとこの雷門サッカー部を受け継いだ彼も10年前のあの人のキャプテンの勤めを受け継いでいるんだ。…性格は別としてだけど。

独り言のように呟いた言葉は神童と霧野の耳に届いていたらしく、二人は今の言葉に訳が分からなさそうに顔を見合わせていた。それを見た悠那は「あ、いえ!」と両手を左右に振って何かを訂正するかのようにしていた。

『わ、私は神童先輩みたいなキャプテンに出会えて良かったなーって…』
「え、あ…俺はっ」

頭を掻いてそう言えば、神童の顔はみるみる内に熱を帯びていくのが見えた。無意識に言ったのだろうが、これはこれで反則なのでは?とは神童も思っていた。自分がキャプテンで、仲間思いの事を他人にここまで言われたのはきっと初めてなんじゃないか?先輩達の希望でキャプテンを任された自分はこの子にとってここまで尊敬される程の事をしていないのに、自然と言われると嬉しい物があった。
そんな神童を見た霧野は不思議と、妙な気持ちに襲われた。

『あ、霧野先輩はなんか最初苦手だと思いましたけど、意外と優しいんですねー』
「…!い、意外は余計だ!」

悠那が神童から視線を外し、自分の本音を霧野に向かって言えば、霧野に何故か頭を叩かれた。(しかもチョップ…)酷いですよー…とか言ってみたが、煩い!と再び叩かれた。いや、本気で殴って来ない所を見てそこらへんは優しさというものだと思うが、それが優しさなら叩かないで欲しい。と、思ったが言える筈もなくただ叩かれていた。

「それくらいにしとけ霧野」
「……」
『神童先輩マジ神』
「え…?!」

悠那が霧野から一歩離れて神童にそう言えば、神童は何故か再び顔を赤くしていた。

「明日のテストで失敗しろ…」
『うわー言いますねー先輩、絶対合格してみますから。覚悟してて下さいね』

身長的に悠那は小さいので、霧野と神童を見上げる形となった。見上げた悠那は口元を吊り上げながら言った。
人差し指を失礼ながらも、その先輩達に向けた。…これは所謂、

『絶対宣言ですよ』

っじゃ、私は忘れ物を取りに行くんで、また明日宜しくお願いしまーす!と悠那はそれだけ二人に言い、長い廊下を走って行った。
残された二人は呆然としながら小さくなっていく悠那の背中を見ながら顔を見合わせた。

「だってよ」
「…そうだな」

入部しても得が無いのにな…と神童は俯きながら口を出さずに思い、自分達も帰ろうと学校から出た。

…………
………


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