「だから、本気の相手はキミ達じゃなきゃいけないんだ。二つの風が居る雷門じゃなきゃ」

太陽が天馬の方に向かって走っていく。天馬もまたボールを奪おうと太陽に向かって走っていく。
どちらかがボールを保持、奪還を試みた瞬間だった。

「キミ達と…キミと悠那となら、本気のサッカーを楽しめる筈だからね」

今度こそ本気で太陽に向かって行った天馬。だが、ボールの方は奪還出来ず太陽がボールを保持して見せた。あ、と驚く天馬を横目で見た後、直ぐにこちらに向かってくる雷門DFに向かって行く太陽。前半にもあったこの展開。
霧野は太陽を止めるべく、狩屋と共に駆け上がった。

「止めるぞ狩屋!」
「分かってますよ!」

だが、それだけでは今の太陽の勢いは止まらない。二人の間を華麗なドリブルで抜いてみせる。雷門もまだDFが居ない訳ではない。二人に続き車田が上がってきた。

「抜かせるかよ!」

だがしかし、車田をも抜き去っていく太陽。いよいよ雷門のDFは悠那だけとなり、太陽の進行力を見て汗を垂らしながらも迎え撃つ悠那。そんな彼女を見て太陽はまた嬉しそうに笑みを浮かべた。

『止めてみせる!!』
「来い!悠那!!」

太陽は走るのを止めて真正面から悠那とぶつかり合う。彼の実力なら悠那を抜き去る事なんてたやすい事だろう。だけどそれを選ばなかったのはきっと彼が彼女ともぶつかり合いたいと思ったからだろう。足でボールを転がし、悠那もまた足を際どいところで滑り込ませる。ボールはまるで踊っているかのように二人の足の間で跳ねている。
だが、そこで悠那は後ろから天馬が駆け寄ってきているのが見えていた。

『っ…太陽、どうしてキミみたいなプレイヤーが、フィフスセクターに居るの…!』
「そうだよ!どうしてキミが…!」
「そうか、キミ達は知らないんだね。フィフスセクターの…いや、聖帝の本当の意志を…」
「え…?」
『い、し?』

後ろから来た天馬。二人で太陽のボールを奪おうとするが、太陽はやはり10年に一人の逸材。そう簡単にはボールも奪えず苦戦している二人。
そんな中、不意打ちというかのように太陽がそう言いだして、二人の動きを鈍らせる。太陽に一瞬の隙を見せた二人を見過ごさなかった太陽は一気に二人を抜かしてみせた。

『しまった…!』

「だけど、今はフィフスセクターも聖帝も関係ない!全力で戦いそして、勝つ!それだけだ!!」

一気に二人を追い抜いた太陽はいつの間にかキーパーである信助と一対一になる。太陽が再び化身を出すのではないか、と感じたのか信助は自分から先手を奪い背後から小さい体から溢れ出す靄は具現化されていった。

「絶対止めてみせる!うおおおおお!!

“護星神タイタニアス”!!」
「そこだ!!」

だが、太陽は化身を出さないどころか、必殺技も発動させないで普通のシュートを打ち出した。今まで化身でシュートを打ってきた太陽だったが、普通のシュートも天才なだけあって強い筈。信助は油断せず、そのシュートを化身技で防ごうと構えに入った。

「“マジン・ザ―――…”」

シュッ!

「え?」

信助が必殺技で対抗しようとした時、太陽の蹴ったボールは地面に当たると同時にスピンがかかり再び跳ねる。跳ねた先は信助の伸ばした手の先ではなくもはや逆方向。つまり、太陽は強烈なスピンをかけていたのだ。そして、太陽はボールの軌道を読み、ボールと同じ方向へと向かい、再びボールを蹴り込んだ。

「はあああ!!」

バシイッ!!

ピ―――ッ!

シュートされたボールは勢いよくゴールの中に入っていき、またもや新雲学園の方へ一点が追加されてしまう。信助の化身も止める事が出来なかった故に消えてしまい、信助もゴールの中に入ってしまったボールを見て唖然。
練習の時は何度かゴールされたが、今は本番。しかも信助はキーパーとして初めてとなる失点。信助はゴールされた事により、足から崩れ落ち表情を曇らせる。
再び一点差を付けられた雷門。悠那は駆け足で信助の元に行き、彼に声をかける。天馬というと、ゴールの中にあるボールをただ黙って見ている。化身ではなく頭を使ったシュートで決めた太陽。そんな彼がポジションに戻る為、こちらに歩み寄ってきていた。

「僕は待ってるよ、天馬」
「えっ?」
「キミとならもっと高く飛べる筈だから」

そう太陽がすれ違いざまに天馬に言う。その言葉がどういう意味で天馬に伝わったのか、天馬は今の言葉に何を思ったのか。
信助の手を掴んで立ち上がらせた悠那は横目で天馬の背中をただ見守るだけしか出来なかった。

「(強い…なんて強さなんだ。ううん、強さだけじゃない。太陽は誰よりもサッカーを楽しんでいる)……これが、太陽のサッカー…

!そっか、そうだったんだね、太陽。俺…やっと分かった気がする」

天馬の目線の先には新雲の陣地へと戻りながら根淵と真住の二人にハイタッチをしながら笑い合っている太陽が居る。その様子に前半までの苦しさは紛れているみたいだ。そして、そんな太陽を見て天馬もまた何かに気付いたらしく、表情もようやく晴れていた。
気持ちが軽くなったのだろう。悠那はそれを見てそっと微笑むと、自分のポジションへと戻ろうとした。

「ユナ」
『あ、天馬。どうしたの?』
「俺…太陽より高く飛ぶ」

それだけ!と言って自分のポジションへと戻っていく天馬に悠那は茫然としながらその天馬の背中を見送る。太陽に一体何を言われたのかよく分からないし、天馬も一体何を考えてそんな事を言ったのか分からないが、とりあえず天馬はもう吹っ切れたと見ていいのだろう。悠那は再び笑ってみせて自分のポジションへと戻っていった。
新雲に点を入れられてしまい、雷門からの攻撃となった。

ピ―――ッ!!

「影山!こっちだ!」

剣城からボールを貰って上がろうとすれば、樹田と真住が輝に向かってきているのが分かる。マークにつかれる前にと、神童が輝にパスを求めて輝もまた神童にボールを回した。

「(雨宮太陽を中心にして全く隙のないフォーメーションが組まれている…どうすれば、突破できる…?)」
「キャプテン!俺にボールを下さい!」
「天馬!」
「俺が太陽を飛び越えてみせます!」
「(太陽を飛び越えるだって…?)」

自分の後ろから勢いよく上がってきている天馬。前半は剣城に手加減していると言われて落ち込んでいると思われたが、表情からしてもう大丈夫そうにも見える。
だが、天馬の言う言葉の意味が神童もまた理解出来ていないのか、疑問符を浮かべる。
天馬はボールを持っていないにも関わらずどんどんと敵陣の方へ突っ走っていく。その天馬の行動に驚かざるを得ない。

「一人で攻める気か!?」
「ちゅーか無茶だって…!」

車田や浜野も驚きの声を上げている中、パスを求められた神童はじっと天馬の様子を伺う。
神童もまた車田や浜野の意見に同意していた。一人で攻めるのはとても困難である。雷門は一点差を再び付けられてしまっている。今ここで天馬一人に任せるのは気が引けてしまう。

「(だが…天馬の目、あれは…)
…よし、天馬!任せたぞ!」

神童はマークにつこうとしていた真住と根淵の頭上目掛けてボールを蹴り上げる。二人はそのボールを取れず見送り、神童からのロングパスは天馬の足元へと渡った。
そして、これからが本気の天馬の反撃となった。



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